アートと精神健康の関係|ウェルビーイングから始まる、人生の豊かさの循環

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美しい表現が導く、精神と心の豊かな調和

私たちが生きるこの社会において、美しい表現や創造的な活動は、人々の心と体を根本から健やかに保つ重要な役割を担うようになってきました。私は、「人は幸せになるためにのみ、この世に送り出された」という揺るぎない確信を持ち、愛と喜びを生命維持に不可欠なものとして表現し続けているアーティストです。表現とは、単に色や形を鑑賞するものではなく、あなたという存在を絶対的な価値として全肯定するための温かなエネルギーのやり取りだと考えています。

近年、日本国内においても、表現の力が人々の精神健康を支えるという素晴らしいニュースが次々と報告されています。

1つ目の嬉しいニュースは、2025年3月4日に公益財団法人筑波メディカルセンターから公表された心温まる出来事です。同法人が運営する筑波メディカルセンター病院において、重症患者のご家族が待機する集中治療病棟の控室に、筑波大学の学生たちと協働して制作されたホスピタルアートが設置されました。患者の回復を祈りながら不安な時間を過ごすご家族に向けて、壁面に描かれた温かな自然の風景や優しい色彩が、張り詰めた緊張を解きほぐし、精神的な安らぎをもたらすことを目的としています。医療という極度の重圧を伴う空間において、表現の力が人々の心を優しく支え、温かな希望を与えてくれるという素晴らしい実例です。

2つ目の素晴らしい出来事は、2023年10月10日に株式会社ヘラルボニーと日本航空株式会社から共同で公表されたニュースです。この取り組みでは、国際線における機内食の提供時に、障害のある表現者たちが描いたアートを用いた特製のデザインスリーブが採用されました。色鮮やかでエネルギーに満ちた作品群は、空の旅という特別な空間において乗客の心を温かく彩りました。多様な才能から生み出される純粋な創造性が、日常の枠を超えて多くの人々に生きる喜びやインスピレーションを届け、社会全体に新しい豊かさをもたらすことが力強く証明されました。

3つ目の喜ばしいニュースは、2020年7月22日にソニーグループ株式会社から公表された、教育プログラム「CurioStep with Sony(キュリオステップ)」の始動に関する知らせです。このプロジェクトは、子どもたちの好奇心と創造性を育むため、音や光などの身近な素材を使ったワークショップを通じて、自由に世界を創り出す経験を提供することを目的としています。自らの手でアイデアを形にするプロセスは、子どもたちの自己肯定感を高め、豊かな精神の健康を優しく育む一助となっています。自分の内面にあるものを外の世界へ表現する行為が、健やかな成長を支えるという、非常に価値のある取り組みです。

この記事を読んでくださっているあなたは、ご自身の人生における「生きがい」や「生きている意義」、「喜び」や「感動」をとても大切にされており、より自分らしい人生を心から楽しみたいと願っていらっしゃるのではないでしょうか。日々を懸命に歩み、見えない世界と現実の世界の両方を大切にする中で、時に言葉にできない葛藤を抱えたり、心の奥底で本当の豊かさを探し求めたりしていることと思います。

美しいものに触れ、心身の調和を整えることは、決して一部の人にだけ許された特別なことではありません。それは、私たちが本来持っている生命のエネルギーを呼び覚まし、毎日を健やかに、そして笑顔で生き抜くために必要不可欠な栄養分なのです。この記事を読むことで、あなたはご自身の内側にある豊かな感性に気づき、日常のあらゆる場面に散りばめられた美しさを受け取る力が高まります。そして、アートとウェルビーイングという2つの要素がどのように重なり合い、精神の健康を支え、あなた自身の人生を輝かせるのかを深く理解していただけるはずです。

アニー・ディラード氏というアメリカの著名な作家は、表現と日々の生活の重なりについて、非常に深く胸を打つ言葉を残しています。

「私たちの日の過ごし方が、もちろん、私たちの人生の過ごし方となります」

アニー・ディラード氏はこの言葉を、著作の中で紡ぎ出しました。私たちはつい、人生という大きな舞台において、何か特別な成果や遠い未来の成功ばかりを追い求めがちです。しかし、アニー・ディラード氏は、本当の人生の質を決定づけるのは、今日という1日の些細な時間の使い方、つまり目の前の光の移ろいを感じたり、誰かと言葉を交わしたりする一つひとつの瞬間の積み重ねであると説きました。この言葉は、私たちが日常の中に美しさを見出し、自分なりの感性で世界を彩る「創造的な視点」を持つことこそが、豊かなウェルビーイングを実現するための最も確かな道であることを教えてくれています。

色彩が呼び覚ます生命の輝きと精神の調和

私たちが社会の中で健康に、そして心豊かに生きていくためには、目に見える物質的な豊かさだけでなく、目に見えない感情や精神の調和が極めて重要になります。美しい色彩や心揺さぶる造形に触れる体験は、単なる視覚的な刺激ではありません。それは、作者が作品に込めた命のエネルギーと、それを受け取るあなたの命のエネルギーが交差し、温かく響き合う空間そのものです。

このエネルギーの交歓が起こるとき、私たちの内側では生命維持に不可欠なパワーが生まれます。理屈や論理だけが優先されがちな現代社会において、「美しい」「心が震える」という純粋な感動は、枯渇しがちな心をたっぷりと潤し、再び力強く立ち上がるための活力を与えてくれます。あなたという存在そのものが絶対的な価値を持ち、心身ともに満たされ、生きる喜びに溢れている状態。それこそが、私たちが目指すべき本当の意味での健やかさであり、豊かな人生の基盤となるのです。アートとウェルビーイングの結びつきは、私たちが人間らしく、輝いて生きるための土台そのものです。

ウクライナ出身でフランスを拠点に活躍した偉大な表現者であるソニア・ドローネー氏の軌跡は、表現が日常の幸福や精神の調和にいかに深く寄与するかを見事に物語っています。ソニア・ドローネー氏は、従来の絵画という枠組みに全くとどまることはありませんでした。彼女は、色彩が持つダイナミックなエネルギーを、衣服や家具、舞台衣装、さらには自動車のデザインにまで持ち込み、生活空間のすべてを一つの表現作品として捉えるという画期的な生き方を貫きました。

ソニア・ドローネー氏の表現の根底にあったのは、色彩の同時対照という手法です。彼女は、異なる色が隣り合うことで生まれる躍動感や、視覚的な響き合いを徹底的に探求しました。彼女にとって、色というものは単なる表面的な装飾ではなく、人間の生命力を高め、感情を豊かに動かすための「生きた素材」でした。彼女は、日々の生活で身に纏うものや、囲まれる空間が美しい色彩で満たされることが、人間の内面的な安定と喜び、つまりウェルビーイングに直結すると確信していたのです。

ソニア・ドローネー氏のエピソードとして象徴的なのは、彼女が自分の息子のために、古いハギレを組み合わせて作ったブランケットです。彼女は、様々な色やパターンの布を幾何学的に配置し、それまでに見たこともないような前衛的で美しい作品を生み出しました。この小さなブランケットは、彼女が後に追求することになる抽象的な色彩表現の出発点となっただけでなく、家族への深い愛情と創造的な喜びが一つになった素晴らしい証でした。

ソニア・ドローネー氏は、芸術というものを美術館の中に閉じ込めるのではなく、人々の肌に触れ、日常の食事や休息の時間に寄り添うものへと解放しました。彼女がデザインした色鮮やかなテキスタイルは、当時の閉塞感のあった社会に新しい風を吹き込み、多くの人々の心に明るい希望を灯しました。色彩が互いに高め合い、光を放つような彼女の作品に触れることは、見る者の無意識の領域に働きかけ、停滞していた生命エネルギーを活性化させる効果を持っていました。

ソニア・ドローネー氏の歩みは、私たちが自らの直感を大切にし、美しい色彩や形を通じて生活を丁寧に彩る行為が、いかに強力な自己肯定のプロセスであるかを教えてくれます。自分の感性を信じて周囲を整えることは、あなたという素晴らしい存在を大切に扱い、日々の中に喜びを創造し続けるための最も美しく効果的な方法なのです。彼女が残した光り輝く色彩の歴史は、今を生きる私たちのウェルビーイングにとっても、色褪せることのない貴重な道標となっています。

没頭する時間がもたらす心の回復と真の幸福

心身の調和を保ち、生きる喜びを最大限に味わうためには、特別な場所へ出かけるだけでなく、日常の生活の中に創造的な視点を取り入れることが大切です。しかし、忙しい毎日の中で、突然感性を研ぎ澄まそうと思っても、なかなか思い通りにいかないことがあるかもしれません。効率や成果ばかりを追い求めるあまり、自分の本当の感情が分からなくなってしまうという状態は、現代を生きる多くの人が直面する壁です。

時間の感覚さえも忘れて活動と一体化する 「フロー」 

ポジティブ心理学の巨星として知られる ミハイ・チクセントミハイ氏 の生涯と探求の軌跡は、私たちがなぜ表現に 「没頭」 し、そこに無上の喜びを見出すのかという問いに対して、極めて科学的かつ慈愛に満ちた答えを提示してくれます。

氏がこの探究を始めた原点は、第二次世界大戦下の過酷なヨーロッパにありました。幼少期に戦争の惨禍を目の当たりにした氏は、周囲の大人たちが希望を失い、精神的に崩壊していく中で、一握りの人々だけが驚異的な回復力を保っていることに強い関心を持ちました。それは、チェスや絵画、あるいは音楽など、自らの全神経を1つの活動に注ぎ込んでいる人々でした。彼らは外側の混乱に翻弄されることなく、内なる穏やかさの中で生命の輝きを保ち続けていたのです。

戦後、氏は心理学者のカール・グスタフ・ユング氏の講演を聴き、人間の心の複雑さと、そこにある再生の可能性に深く感銘を受け、心理学の道を志しました。そして米国のシカゴ大学などで長年にわたり、表現者や登山家、外科医といった「自発的に困難な課題に挑む人々」を詳細に調査しました。その研究の末に辿り着いたのが、自己意識が消え去り、時間の感覚さえも忘れて活動と一体化する 「フロー」 という概念です。

氏の提唱するフローは、単なる集中とは異なります。それは、自分自身の持つスキルと、目の前にある課題の難易度が完璧なバランスを保った時に訪れる、魂が最も輝く状態です。意味や正解を求める論理的な思考を穏やかに手放し、目の前の色彩や光の揺らぎ、あるいは木の葉の重なりといった現象に完全に心を奪われたとき、私たちの脳内では喜びを感じる仕組みが活性化し、深い幸福感と活力に満たされます。多忙な毎日を送る皆様が、ふと足を止めて自然の造形を眺める数分間も、まさにこのフロー状態へのきっかけとなり、ウェルビーイングを底上げするための最も贅沢で効果的な自己管理の時間となるのです。

ウェルビーイングを高める段階的ステップ

ウェルビーイングを高めるためには、段階的なステップがあります。

1つ目のステップは、自らの体温と身体感覚に意識を向けることです。身体が緊張して冷えていると、心も固くなってしまいます。まずは温かい飲み物をゆっくりと味わったり、心地よい温度のお湯に浸かったりして、ご自身の内側からじんわりと温かさが広がる感覚を大切に味わってみてください。

2つ目のステップは、五感を意図的に開くことです。私たちは日常の情報の大部分を「潜在意識」で処理し、ほんのわずかな部分だけを顕在意識で捉えています。美しい表現や自然に触れ、五感を整えることで、思考の緊張がほぐれ、目の前の世界により深く没入することができます。

ウェルビーイングを構成する5つの重要な要素「ピーイーアールエムエー(PERMA)」

ポジティブ心理学の創始者として世界的に知られるマーティン・セリグマン氏の歩みは、私たちが何かに「没頭」することがいかに精神の健康を支えるかを科学的に示しています。マーティン・セリグマン氏は、ウェルビーイングを構成する5つの重要な要素として「ピーイーアールエムエー(PERMA)」モデルを提唱しました。その中でも特に重要な要素として挙げられているのが、今回のテーマでもある「エンゲージメント」、つまり「没頭」です。

マーティン・セリグマン氏は、単に快楽を追求することだけが幸せではなく、自らの強みを活かし、時間を忘れて何かに熱中する経験こそが、精神的な満足度を劇的に向上させると説きました。何かに没頭しているとき、私たちの脳内では自身の悩みや不安、さらには自己意識そのものが一時的に消え去ります。この「フロー」と呼ばれる状態を経験することで、私たちは心の奥底からリフレッシュされ、しなやかに立ち直る力を育むことができるのです。

マーティン・セリグマン氏のエピソードには、彼が研究を通じて、表現活動が人々にもたらす劇的な変化を目の当たりにした際の記録があります。何らかの課題を抱えていた人々が、楽器を奏でたり、絵を描いたり、あるいは庭仕事に没頭したりする時間を持つことで、それまで彼らを支配していたネガティブな感情のループから抜け出し、生命力に満ちた表情を取り戻していく様子が数多く報告されています。没頭とは、単なる時間の浪費ではなく、自分自身を深く癒やし、内なるエネルギーを再充填するための神聖なプロセスなのです。

日常のあらゆる行動の中に、自分なりの美しさや楽しさを見出す視点を持つことで、生活そのものが豊かな文化活動へと昇華されていきます。マーティン・セリグマン氏が示したように、目の前の活動に心を注ぎ、ただその瞬間に存在すること。それこそが、私たちのウェルビーイングを根本から支える強力な土台となります。あなたという素晴らしい存在を丁寧に整え、喜びというエネルギーで満たしていくための、最も贅沢で効果的な自己管理の方法が、この「創造的な没頭」にあるのです。

感情の解放と親密なつながりが導く生命の治癒

表現を通じた対話が、人の心と体に劇的な変化をもたらす実例は、世界の至る所に存在します。悩みや迷いを抱えていた人が、自らの内側に眠る創造性に気づき、表現を通じて他者や自分自身と深く結びつき、大きな喜びを手にする過程は、人間の魂が持つ回復力の素晴らしさを教えてくれます。

アメリカの著名な医学博士であり、心臓病の回復と感情の関係について革新的な研究を行ったディーン・オーニッシュ氏の軌跡は、創造的な表現と愛情が人間の生命にいかに深く作用するかを示す、非常に感動的な物語です。ディーン・オーニッシュ氏は、かつて心臓病の治療においては食事や運動といった物理的な管理がすべてだと考えられていた常識に対し、重大な一石を投じました。

ディーン・オーニッシュ氏の研究によって明らかになったのは、孤立感や感情の抑圧こそが、人間の身体、特に心血管系に深刻なダメージを与える大きな原因であるという事実でした。ディーン・オーニッシュ氏は、患者たちが自らの脆さや弱さを認め、それを安全な場所で他者と共有し、言葉や行動で表現するという「感情の対話」のプロセスを治療に組み込みました。彼はこれを「心を開くこと」と呼び、それが文字通り「冠動脈を開くこと」に繋がると提唱したのです。

ディーン・オーニッシュ氏のエピソードの中で象徴的なのは、彼が実施したライフスタイル改善プログラムに参加した患者たちの変化です。最初は重い不安を抱え、自分の本当の気持ちを話すことを恐れていた人々が、表現を通じたグループ活動や瞑想の中で少しずつ心の内側を明かし、互いに温かなエネルギーを交換し合うようになりました。すると、医学的には不可能だと思われていた血管の詰まりの改善や、心臓機能の劇的な回復が、多くの患者において実際に観察されたのです。

この発見は世界中に衝撃を与えました。美しい音楽を聴いて涙を流したり、自らの想いを詩や絵に託して他者と分かち合ったりする創造的な行為は、単なる気休めではありません。それは、私たちの身体機能を司る自律神経系に直接働きかけ、免疫力を高め、生命の調和を取り戻すための極めて実効性のある「癒やしの力」を持っているのです。ディーン・オーニッシュ氏は、健康とは単に病気ではない状態を指すのではなく、自らの人生を愛し、他者と親密につながり、温かな感情で満たされている状態のことだと教えてくれました。

ディーン・オーニッシュ氏が推奨した「感情の表現による対話」は、私たちが自分自身に対して行うこともできます。日々を懸命に生きていると、自分に対して厳しくなりすぎたり、無意識のうちにプレッシャーをかけてしまったりすることがあります。そのような時こそ、自分の中にある本当の声を無視せず、それを色や形、あるいは誰かへの親切な行動として外の世界へ放ってあげることが重要です。

自らの感情を肯定し、笑顔を取り戻すとき、その温かい波紋は周囲の人々へと広がり、社会全体を健康へと導いていきます。ディーン・オーニッシュ氏の歩みは、誰もが自分の中に素晴らしい独創性と愛を持っており、それを表現することを許したとき、自分自身の人生の軌道を大きく好転させる強力なエネルギーが生まれるという真実を教えてくれます。愛と共感のエネルギーが循環する場所でこそ、人は本当の意味での生きる力を得ることができるのです。

才能という思い込みを手放し、独創性を羽ばたかせるために

日常に美しい表現を取り入れ、精神の健康を豊かにしていく過程において、多くの方が気づかないうちに抱いてしまう視点の癖があります。その代表的なものが、「表現を楽しむためには、特別な才能や、専門的な知識、高価なコレクションが必要なのではないか」という思い込みです。

美術館や展示会を訪れた際、作品そのものよりも横に添えられた解説文を一生懸命に読み込んでしまったり、この作品のどこが優れているのかを正しく理解しなければと肩に力が入ってしまったりすることはありませんか。歴史を知ることは有意義なことですが、それは決して必須条件ではありません。意味や正解を探そうと顕在意識を働かせすぎると、直感や感情を司る潜在意識の扉が閉ざされてしまいます。最も大切なのは、あなたの心がどう反応したかという事実そのものです。道端に咲く花の色にハッと息を呑む瞬間も、雄大な風景に感動する時間も、そこに発生する生命の歓喜に優劣はありません。心が微かに高鳴ったという事実こそが、あなたにとっての最高の価値なのです。

アメリカの優れた文筆家であり、多くの人々に表現の喜びを伝えた教師でもあったブレンダ・ユーランド氏の歩みと名言は、この視点の本質を教えてくれます。

「誰もが才能を持ち、独創的であり、語るべき重要な何かを持っています」

ブレンダ・ユーランド氏は、著作の中で、私たちが自らの内なる声に耳を澄ませ、自分自身であることの自由を許したとき、すべての人が素晴らしい表現者になれると説きました。彼女は、完璧主義や「立派なものを作らなければならない」という他者の評価を恐れる心が、私たちの創造性を封じ込めている最大の障害であると指摘しました。彼女自身も、多くの生徒たちと向き合う中で、技術の巧拙を超えて、その人が自分自身の真実に触れた時に放たれる言葉や色彩がいかに力強く、人々の心を打つかを何度も目の当たりにしてきました。

ブレンダ・ユーランド氏のエピソードには、彼女が「創造性というものは、使えば使うほど枯渇するのではなく、むしろ使えば使うほど、より多く、より豊かに湧き上がってくるものだ」と語った記録があります。私たちは大人になるにつれて、社会のルールや忙しさの中で、無意識のうちに自分の感情を抑え込み、自分には独創性などないと思い込んでしまいがちです。しかし、ブレンダ・ユーランド氏が示したように、自分の小さな「好き」や「心地よい」という感覚を大切にし、それを何らかの形で外に表現することを許してあげるだけで、生命のエネルギーは再び温かく循環し始めます。

断定せず、意味や正解を求めることを穏やかに手放すとき、私たちの精神は本来の柔軟さを取り戻し、世界に満ちている無数の美しさをそのまま受け取ることができるようになります。あなた自身の魂が何に共鳴し、何を欲しているのか。その内なる声に耳を澄ませることこそが、日常のあらゆる場面で生命の歓喜を見出し、ウェルビーイングを最高潮に高めるための最大の鍵となります。

愛と喜びのエネルギーを未来へつなぐ

ここまでの内容を通して、創造性と幸福の哲学、そしてアートとウェルビーイングがどのように私たちの人生を豊かにするのかをお伝えしてきました。重要な視点を3つに集約します。

1つ目の視点は、「人生の質は、今この瞬間の意識で決まる」ということです。アニー・ディラード氏が示したように、毎日の小さな瞬間に美しさを見出すことは、あなたという存在を根底から肯定し、豊かな人生を創り出すための温かな活力を生み出します。

2つ目の視点は、「没頭する時間が心の調和を取り戻す」ということです。マーティン・セリグマン氏が提唱したように、何かに心を奪われて自分を忘れる時間は、心身の緊張を解き、本来の健やかさを回復させます。

3つ目の視点は、「感情の解放が身体の治癒を助ける」という事実です。ディーン・オーニッシュ氏が証明したように、自らの本当の感情を認め、表現することで、生命エネルギーは自由に循環し始めます。

今日からすぐに始められる小さな行動をご提案いたします。明日のお出かけの際、家を出てから最初の10歩だけ、ご自身の足の裏が地面に触れる確かな感覚に全神経を集中させてみてください。地面を踏みしめる重みや感触をただ味わう。ただそれだけのささやかな身体的感覚への没入が、あなたの意識を常に先回りする思考から引き戻し、今この瞬間に根を下ろすための素晴らしいきっかけとなります。

スティーヴン・チョボスキー氏というアメリカの映画監督が手がけた名作映画『ワンダー・君は太陽』の中で、非常に深く考えさせられる名言が口にされます。

「正しいことをするか、親切なことをするか、どちらかを選ぶときは、親切な方を選びなさい」

この言葉は、外見に特徴を持って生まれた少年が、学校という社会の中で困難に直面しながらも、周囲の人々と心を通わせていく物語の核心を突いています。私たちはつい「正解」や「正しさ」を求めて自分や他者を厳しく評価してしまいがちですが、何よりもまず自分自身に、そして他者に「親切であること」を選択するとき、そこには理屈を超えた安心感と幸福が生まれます。アートや美しい文化もまた、世界に対する「親切な眼差し」そのものです。あなたが美しさに感動し、その優しさを自分自身にも向けるとき、命のエネルギーは輝かしい未来へと受け継がれていくのです。

最後に、アメリカのテキサス州、マーファという広大な草原の中に佇む「チナティ・ファンデーション」をご紹介します。この美術館は、ミニマリズムの先駆者であるドナルド・ジャッド氏が、かつての軍事施設を自らの手で再生させ、広大な自然環境と芸術が見事に融合した空間へと作り変えた場所です。

チナティ・ファンデーションの最大の特徴は、作品を展示するためだけの建物ではなく、周囲に広がる果てしない草原、そして空から降り注ぐ光の移ろいそのものを、芸術表現の不可欠な要素として取り込んでいるという点です。例えば、かつての格納庫を改造した光あふれる空間には、アルミニウムで作られた100個の巨大な箱の作品が整然と並んでいます。これらの箱はすべて同じ外形寸法を持ちながら、内側の分割の仕方が一つひとつ異なっています。窓からはテキサスの壮大な地平線が見え、太陽の動きに合わせて箱の表面に反射する光の色や影の形が、1分1秒ごとに刻々と変化していきます。

ここには、芸術と自然を隔てる壁は一切存在しません。訪れる人々は、巨大な空間の中を風に吹かれながらゆっくりと歩き、自分自身もまた、大いなる宇宙の循環の一部であることを全身で感じ取ることができます。ドナルド・ジャッド氏は、作品を恒久的に設置することにこだわり、環境と芸術が切り離せない関係であることを証明しました。

チナティ・ファンデーションは、芸術を神聖な箱の中に閉じ込めるのではなく、地球という壮大なキャンバスと、そこに生きる人間の命をそのまま肯定する空間を創り出しました。静かな大地の呼吸と見事に調和したこの場所のあり方は、まさにアートが人間の精神を健やかに包み込み、ウェルビーイングを最高潮に高めている最高の象徴です。果てしない草原を渡る風を感じながら、光と影が織りなす圧倒的な美しさを体感することは、あなたの魂に深い安らぎと、生きる喜びという力強い光を与えてくれることでしょう。いつか機会がありましたら、ぜひその美しい地平線を訪れてみてください。

最後に、あなたへ大切なメッセージをお伝えします。

 

愛と使命を両立するあなたへ。

私たちがこの世に生まれてきた理由は、

決して苦しんだり、人を恨んだり悲しんだり、傷つけ合ったりするためではありません。

命とは、喜びを味わうために生まれてきたものです。

命の温かさを感じ、知り、「生きててよかった」とほっとして、安心してニコニコ笑うために生まれてきたのです。

私たちは、絶対的に今世の命を楽しむべきなのです。

『愛のある場所でこそ、人は生きる力を得る。』

『人生とは、喜びという宝物を探す旅である。』

『温かな感情は体温を上げ、人を幸せへ導く。』

どうぞ忘れないでください。

『あなたは、神様がつくった最高傑作』です。

あなたの命が、これからも喜びというパワフルなエネルギーで満たされ、温かな笑顔とともに輝き続けることを心から願っています。

私は、「人は幸せになるためにのみ、この世に送り出された」という揺るぎない確信を持ったアーティストです。

愛や喜びは、抽象的な概念などではなく、私たちの「生命維持に不可欠な根源」だと考えています。

だからこそ、私のアートやメッセージには、あなたの存在そのものを絶対的な価値として全肯定するエネルギーを込めています。

あなたがいつも、大いなる愛と光に守られていますように。

そして、あなたの大切な命の時間が、たくさんの幸運と共にありますように。

 

nao

【参考情報・引用元】

  • 公益財団法人筑波メディカルセンター(病院アートの力で、重症患者の家族が「気持ちを落ち着かせて待機できる空間」を集中治療病棟に整備)
  • 日本航空株式会社(JAL、ヘラルボニーと業務提携を締結)
  • ソニーグループ株式会社(ソニー、あらゆる子どもたちの好奇心を育む教育プログラム「CurioStep with Sony」を開始)
  • 文藝春秋(アニー・ディラード『ポトマック河のほとりで』)
  • 平凡社(ソニア・ドローネー ──生活を彩る色彩の魔術師)
  • 講談社(マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦 ──「幸福」から「持続的幸福」へ』)
  • 日本教文社(ディーン・オーニッシュ『愛とサバイバル』)
  • 晶文社(ブレンダ・ユーランド『書くことについて』)
  • 岩波書店(フリードリヒ ──自然の鏡:カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ)
  • ライオンズゲート(映画『ワンダー・君は太陽』公式サイト)
  • チナティ・ファンデーション(歴史と建築について)
  • オムロン ヘルスケア株式会社(体温を上げて免疫力アップ | 健康のアイデア)
  • GLOBIS 知見録(無意識(潜在意識)の力を使って目標を達成する)
  • TED(Mihaly Csikszentmihalyi: Flow, the secret to happiness)
  • Positive Psychology Center(Mihaly Csikszentmihalyi)
  • ティーイーディー(ミハイ・チクセントミハイ:フロー、幸福の秘訣)
  • ペンシルベニア大学ポジティブ心理学センター(ミハイ・チクセントミハイ氏について)
  • 世界思想社(フロー体験 喜びの現象学)

 

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