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疲れた心を整えるアート習慣|感性を解き放ちウェルビーイングな毎日へ
日々の充実した生活の中で、ふとご自身の内面に目を向けたとき、生きがいや生きている意義、そして日々の喜びや感動を大切にして、より自分らしい人生を心から楽しみたいと感じる瞬間はないでしょうか。社会の中で多くの責任を果たしながら歩みを進めている皆様にとって、心を満たす美しい時間は、人生をより豊かに彩るための極めて大切な栄養となります。
私は日々表現と向き合う中で、「人は幸せになるためにのみ、この世に送り出された」という揺るぎない確信を持っています。愛や喜びは、私たちの命を支える根源的な力です。目の前にある美しい色彩や形は、あなたという存在を全面的に肯定し、温かなエネルギーで包み込んでくれるものです。
近年、そのような温かな美の力を社会全体で共有しようとする素晴らしい出来事が数多く報告されています。例えば、2024年4月20日、イタリアのヴェネツィアにおいて、世界最高峰の芸術祭である第60回ヴェネツィア・ビエンナーレが開幕しました。「外国人よ、どこにでも(Stranieri Ovunque)」というテーマのもと、世界中から集まった多彩な作品が、境界を越えて共鳴し合う「人間の普遍的な生命力」を表現し、訪れる人々に深い感動と癒やしを届けました。また、米国のニューヨークにあるメトロポリタン美術館(The Met)では、2024年より来館者の精神的な健康をサポートするYour Met Artwellという包括的なプログラムが本格的に導入されています。この試みでは、五感を研ぎ澄まして一つの作品と対話する時間が、孤立を防ぎ、心の回復力を高めるセルフケアとして高く評価されています。さらに、国内でも2024年、京都国立近代美術館を中心にアートとウェルビーイングの可能性を拓くプロジェクトが推進されました。鑑賞を通じて心身の緊張を解きほぐし、他者との新たな対話を育むこの試みは、表現の力が社会全体を健やかに再生させるための確かな一歩となったのです。
このように、世界は常に美しい表現で満ち溢れており、それは私たちの心に直接語りかけてきます。私たちがこの世界で豊かな時間を過ごすためには、心にそうした美しさを取り入れることが何よりも大切です。現代社会は非常に速度が速く、情報が溢れているため、ご自身の本当の感情や純粋な喜びをつい後回しにしてしまうこともあるかもしれません。そのような時こそ、日常の中にささやかなアートの習慣を取り入れることが、ご自身の感性を呼び覚まし、人生をより輝かせるための強力な支えとなります。この記事を読むことで、皆様はアートとウェルビーイングがもたらす癒しの力を深く理解し、日常の中で感情を優しく解き放つための具体的な方法を見つけることができるでしょう。
20世紀のアメリカを代表する作家であり、その鋭くも温かな人道的視点で多くの読者を魅了したカート・ヴォネガット氏は、「どんなに上手でも下手でも、芸術を実践することは、魂を成長させるための最良の方法です」という力強い言葉を遺しています。
この言葉の真意は、芸術を「評価」や「成果」という物差しから完全に解放することにあります。ヴォネガット氏にとって、絵を描く、歌う、あるいは美しさに深く見惚れるといった行為は、誰かに見せるための技術ではなく、「自分という存在が今、何を感じているのか」を探求するプロセスそのものでした。上手くある必要も、誰かの役に立つ必要もありません。ただ心を動かすこと自体が、硬くなった魂を柔らかく解きほぐし、内面を豊かに耕してくれるのです。
芸術とは、決して一部の選ばれた人々のための特権ではありません。私たちが日々、目の前の美しさに足を止め、そこに自分だけの意味を見出すその瞬間こそが、私たちの存在を根底から満たし、歩みに温かな光を灯してくれます。この記事を通して、皆様がご自身の内なる感性を解き放ち、より心穏やかで喜びに満ちた毎日を歩んでいかれるためのきっかけをお届けできれば幸いです。
科学と歴史が証明する表現の力と内面的な調和の相関
私たちがより豊かな毎日を送るうえで、アートとウェルビーイングという2つの概念は、決して切り離すことのできない深い関係にあります。美しい表現の世界に触れ、それをご自身の生活の一部にすることは、単に視覚的な快感を得るだけにとどまりません。それは、私たち自身の心と体が持つ本来の調和を取り戻し、生きていることへの根源的な喜びを実感するための極めて効果的な道筋なのです。近年、この心身の調和がもたらされる仕組みが、世界的な研究によって解明されてきました。
2019年に世界保健機関(WHO)が公表した大規模な報告書によれば、文化的な活動に参加することは、精神的な健康だけでなく、身体的な健康にも多大な恩恵をもたらすことが示されています。表現に触れる習慣がストレスを軽減し、病気の予防を助ける手段になることが明らかにされました。アートの本質とは、物質的な枠を超え、作者の命のエネルギーと、それを受け取る皆様の命のエネルギーが交差するやり取りの場です。そしてウェルビーイングとは、単に病気ではない状態ではなく、皆様という存在そのものが絶対的な価値を持ち、心身ともに満たされ、生きる喜びに溢れている状態を意味します。
この2つが結びつくとき、私たちは生命維持に不可欠な燃料を手に入れます。論理や効率だけが重視されがちな現代において、理屈では説明できない「好きだ」「美しい」「心が震える」という感情は、枯渇しがちな内面を潤し、再び立ち上がるための温かな活力を与えてくれます。
表現の力が持つ癒やし
このような精神の回復は、歴史上の多くの偉大な人々によっても実践されてきました。19世紀のイギリスを象徴するヴィクトリア女王も、その生涯を通じて表現の力が持つ癒やしを深く理解し、体現していた一人です。彼女は広大な帝国を導くという、想像を絶する重責を担っていましたが、その傍らで水彩画を描く時間を何よりも大切にしていました。
女王が遺したスケッチや水彩画は4,000点を超え、その膨大な数は彼女にとって「描くこと」が単なる余暇ではなく、切実な「心の平穏」の追求であったことを物語っています。高名な画家エドワード・リアやエドウィン・ランドシーアから手ほどきを受けた彼女は、公務の合間を縫っては、愛する子供たちの成長、忠実なペット、そして避暑地バルモラルの霧深い風景を静かに描き留めました。
帝国を統べる「女王」という役割から離れ、一人の人間として筆を動かし、色彩を重ねるその時間は、彼女にとって外世界の喧騒を遮断し、自らの内面を整えるための神聖なシェルターでした。特に最愛の夫アルバート公を亡くした長い喪失の時期において、水彩画は彼女の孤独な魂を支え、崩れそうな心をつなぎ止める回復の営み(リカバリー)として機能したのです。一国の主として常に「強くあること」を求められた彼女が、スケッチブックの中では繊細な感性を解き放ち、ありのままの自分を慈しんでいた。この事実は、現代を生きる私たちにとっても、表現という習慣がいかに強固な心の支えになるかを静かに教えてくれます。
鉄の王が見つけた、静寂の庭園
米国の鉄道事業や都市開発の礎を築き、「鉄の男」と呼ばれた実業家ヘンリー・エドワーズ・ハンティントン氏もまた、表現の力がもたらす恩恵を深く理解し、実践した人物です。彼は、南カリフォルニアの発展を牽引する多忙な日々の中で、稀少な美術品や古書を収集するだけでなく、それらを120エーカー(東京ドーム約10個分)にも及ぶ広大な植物園の中に配置し、独自の小宇宙を創り上げることに情熱を注ぎました。
60歳で実業界の第一線を退いた後の彼は、まさに「ただ見つめる」ことの力を体現していました。トマス・ゲインズバラの傑作『青い少年』をはじめとする英国絵画の数々に囲まれ、世界中から集められた砂漠植物や日本庭園を静かに散策する時間は、彼にとって、荒々しいビジネスの世界で張り詰めた心身を整えるための最も重要な儀式でした。彼は「自分を喜ばせるものを、人々と分かち合いたい」という信念を持ち、私邸そのものを公共の財産として開放する道を選んだのです。
彼が遺した「ハンティントン・ライブラリー」は、今も世界中から訪れる人々を癒やし、インスピレーションを与え続けています。これは、一人の人間が美しさに深く没入し、その心が満たされることが、いかに時代を超えて周囲へと豊かに波及していくかを如実に物語っています。美しいものを慈しむ習慣は、乾いた魂を潤し、人生を真に価値あるものへと変える普遍的な泉なのです。
脳を活性化し疲れを癒やす具体的なアート習慣の実践方法
日々の暮らしの中でアートの恩恵を受け取り、ウェルビーイングを高めていくための方法は、特別な技術を必要としません。大切なのは、上手に行おうとせず、ただご自身の感覚に意識を向ける過程を味わうことです。なぜそれが必要なのか。それは、私たちの意識を外側の評価から内側の感覚へとシフトさせることで、内面の滞りを解消し、生命の鼓動を再び鮮明にするためです。脳科学の研究によれば、作品を細部までじっくりと見つめる行為は、脳内のリラクゼーションを司る領域を刺激し、心拍数を安定させることが示唆されています。
具体的な習慣の1つとして、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートが推奨するように、5分間だけ一枚の作品をじっくりと見つめる時間を持つことが挙げられます。色彩の変化や筆致の勢いを言葉を交えずに観察するだけで、脳の緊張は緩和されます。また、自ら表現を行うことも極めて効果的です。米国のドレクセル大学の研究チームが実施した調査によれば、創造的な活動を45分間行うだけで、体内のストレスホルモンであるコルチゾールの値が有意に減少したという公表データが示されています。この効果は技術の有無に関わらず、すべての参加者において見られました。
「無垢な眼(Innocence of the Eye)」と呼んだ境地
こうした実践において、多くの人が経験しやすい滞りとして、「教養として身につけなければならない」「正しく理解しなければならない」という知的な力みが挙げられます。この「専門知識」や「正解」という重圧から離れ、純粋な「見る喜び」によって精神の均衡を取り戻した象徴的な人物が、19世紀の英国を代表する思想家であり美術批評家でもあったジョン・ラスキン氏です。
彼は当時の美術界において、作品の価値を決定づけるほどの巨大な権威を持っていました。しかし、あらゆる作品を分析し、論理的に解釈し続ける日々の中で、彼は次第に精神的な疲弊と深刻な虚無感に直面することになります。知識を積み重ねるほど、目の前にある「美」そのものが持つ輝きが、言葉の層に埋もれて見えなくなってしまったのです。
そこで彼が辿り着いたのが、のちに「無垢な眼(Innocence of the Eye)」と呼んだ境地でした。それは、対象が何であるか、どのような名前で呼ばれているかという既成概念を一切捨て、ただ目の前にある色彩や形を、初めて世界を見た子供のような新鮮な驚きで見つめるという姿勢です。ラスキン氏は、道端に落ちている一つの石や、鳥の羽、あるいは空に浮かぶ雲の微細な変化を「ただ認める」ことに没頭しました。彼にとってその時間は、知的な分析という「重労働」から解放され、宇宙の調和の中に身を委ねるための、魂の静養プロセスだったのです。
皆様も、ラスキン氏が提唱するように、身近な美しさと触れ合う時間を「自分だけの自由な対話」として捉えてみてください。例えば、朝のコーヒーを飲む間の5分間、窓から見える木々の葉が風に揺れる様子や、光の当たり方で変わる複雑な色合いを、ただ追いかけてみる。あるいは、眠りにつく前の数分間、今日出会った一番美しい色彩を脳裏に再現し、その感触を味わってみる。
そうした「知識を通さない」小さな積み重ねが、凝り固まった脳を解きほぐし、あなたのウェルビーイングを根本から支える強力な土台となっていくでしょう。忙しい毎日だからこそ、評価や理解という枠組みを外し、ご自身の内なる平穏へと戻るための「ただ見るだけ」の時間を大切にしていただきたいのです。美は、あなたが自分自身に立ち返るのを助けてくれる、最も誠実で静かな伴走者なのですから。

内面との対話がもたらす行動の変化と確かな社会的実証
実際にアート習慣を日常に取り入れることで、私たちの感情や行動にはどのような変化が訪れるのでしょうか。ある素晴らしい実例をご紹介します。20世紀を代表する天才物理学者であり、ノーベル賞受賞者でもあるリチャード・ファインマン氏は、かつて「科学で説明できないものには価値がない」と考えるほど、極めて論理的で硬直的な思考の持ち主でした。しかし40代半ばの頃、友人である芸術家との交流をきっかけに、彼は「自分は世界を数式でしか見ておらず、真の美しさを観察できていないのではないか」という疑問を抱き、自ら絵筆を握り、対象を無心に観察する習慣を始めました。
彼は「オフィール」という偽名で美術学校に通い、モデルの肉体や自然の造形を、何時間も、時には何日もかけてじっくりと観察し続けました。最初は「単なる線の集合」にしか見えなかった対象が、光の当たり方や影の落ちる位置、そして対象が放つ言葉にできないエネルギーとして立ち上がってくる経験を通じ、彼は自分の中にあった「すぐに答えを出そうとする知的な傲慢さ」が消えていくのを感じました。ただ無心に観察し、そこにある複雑さをそのまま受け入れる時間は、多忙を極める科学者としての彼に、かつてない心の静寂と深い呼吸をもたらしたのです。
この習慣を数年続けた結果、ファインマン氏の行動には驚くべき変化が現れました。彼は科学の難解な問題を解く際にも、以前のような強引な論理の積み上げではなく、まずは対象を「ありのままに観察し、感じ取る」という、より柔軟で直感的なアプローチをとるようになったのです。また、周囲の人々に対しても、相手の言葉の裏にある感情や文脈を深く観察するようになり、以前よりもはるかに寛容で、ユーモアに溢れた人間関係を築けるようになりました。アートという鏡を通じて「世界を多層的に見る術」を身につけたことで、彼の人生はそれまで以上に色鮮やかで、喜びに満ちたものへと作り変えられたのです。
HUNT研究
このような変化は、大規模な調査によっても裏付けられています。ノルウェー科学技術大学などの研究チームが実施した健康調査であるHUNT研究によれば、文化的な活動や芸術に定期的に触れている人々は、人生に対する満足度や自己肯定感が有意に高いことが確認されています。参加者の約80パーセントにおいて、生活の質が向上し、精神的な幸福感が維持されやすいという公表データが示されました。表現に触れる習慣は、私たちの脳の回路を整え、ストレスに対する回復力を高める力を持っているのです。
繊維産業に革命を起こした実業家
こうした内面の調和は、19世紀末から20世紀にかけて、人造絹糸(レーヨン)の製造で英国の繊維産業に革命を起こした実業家サミュエル・コートールド氏の歩みからも鮮やかに見て取れます。彼は巨大な国際企業のトップとして日々過酷な重責を担う一方で、「芸術は一部の特権階級のものではなく、労働者を含めたすべての人々の魂を救い、生活を豊かにするものである」という強い信念を持っていました。
コートールド氏は、ロンドンのポートマン・スクエアにある自邸「ホーム・ハウス」に、マネの『フォリー・ベルジェールのバー』やセザンヌ、ルノワールといった、当時はまだ保守的な英国で正当な評価を受けていなかったフランス印象派・ポスト印象派の珠玉のコレクションを並べ、それらをただ静かに見つめる時間を、自らの精神を整えるための最も神聖な儀式として大切にしていました。
彼にとって、キャンバスに刻まれた色彩や光の揺らぎと対話するひとときは、産業界の合理性や効率主義から一時的に身を引き、自らの魂を深い潤いで満たすための不可欠なプロセスでした。この「美への没頭」によって得られた内面の静寂と豊かな感受性は、彼の経営判断に深い洞察を与えただけでなく、やがて私財を投じたコートールド美術研究所の設立という、人類の感性を育む巨大な遺産へと繋がっていったのです。
自分自身の内面と対話し、そこから湧き上がる温かな感情を大切に扱うことは、行動の質を根本から引き上げ、より輝かしい未来を切り拓くための極めて強力な方法となります。アートとの触れ合いは、そのための最も豊かで優雅な導線なのです。
迷いを超えて感性を解き放つための新しい視点
いざアート習慣やウェルビーイングを意識して生活に取り入れようとした時、多くの人が無意識のうちに抱いてしまう思い込みや迷いがあります。その最も代表的なものが、特別な才能や感性がなければ効果は得られないのではないかという疑問です。しかし、アート習慣において才能は全く必要ありません。むしろ、上手く感じなければならないという意図を完全に手放したとき、初めて心の扉は穏やかに開かれます。
ここで、皆様の心を自由にするための大切な視点を整理しましょう。
まず、正解を求めないということです。一枚の作品を見て、何を感じても、あるいは何も感じなくても、それが皆様のその時の真実です。他者の解釈や一般的な評価を気にする必要はありません。
次に、分からなさを楽しむということです。抽象的な形を前にして、何が描かれているのか分からないと感じることは、脳が新しい刺激を受け取っている証拠です。答えを出そうと急がず、その分からないという状態の心地よさを味わってみてください。
「色彩の詩人」と謳われた巨匠マルク・シャガール氏は、「私たちの人生には、画家のパレットと同じように、人生と芸術に意味を与えてくれるたった一色の色がある。それは『愛』という色だ」という名言を遺しています。シャガールにとって芸術とは、単なる技術の誇示ではなく、生命の根源にある「愛」というエネルギーを表現し、分かち合うための手段でした。
表現に触れることは、自分を取り巻く世界や、あなた自身の生命が持つ豊かな可能性を信じ、その輝きを再び見出すための営みです。知識で作品を解釈しようとする必要はありません。ただ心を全開にして、そこに溢れる色彩という名の「愛のエネルギー」を受け取っていただければと思います。
「メニル・コレクション」を設立したドミニク・ド・メニル氏
こうした自由な視点を持ち続けた実例として、フランスの石油探査大手シュルンベルジェ家の令嬢であり、米国ヒューストンに世界屈指の私設美術館「メニル・コレクション」を設立したドミニク・ド・メニル氏がいます。彼女にとってアートは、知的な教養やステータスではなく、人間が精神の深淵に触れ、乾いた魂を解き放つためのものでした。
彼女が美術館を創設する際に最もこだわったのは、展示室の作品の横に、作家名や解説を記したパネル(キャプション)を一切置かないことでした。これは「知識」というフィルターが、鑑賞者と作品との間に壁を作ってしまうことを恐れたためです。彼女は、脳が「文字情報」を処理し始める前に、目が「色彩や形」を直接捉え、心に波紋が広がるその瞬間を何よりも神聖なものとして守り抜きました。
彼女は、誰もが権威ある評価や教科書的な正解に頼ることなく、自分自身の感性だけで作品と対話し、そこから個人的な祈りや物語を見出すことができる「沈黙の空間」を追求し続けました。美術館を覆う柔らかな自然光さえも、作品が呼吸し、見る人の心が自然に開くようにと緻密に設計されています。
皆様も、メニル氏が生涯をかけて守り抜いたように、美との出会いを自分だけの自由な経験として捉えてください。理屈を超えた場所にある「好きだ」という直感、あるいは「なぜか目が離せない」という感覚こそが、皆様を内なるウェルビーイングへと導く最高の道標となります。断定的な解釈を手放し、ご自身の感性が赴くままに美を楽しむことで、心は自然と解き放たれ、より豊かな日常への扉が開かれます。どうぞ安心して、ご自身の歩幅でこの優しい世界を探索してみてください。美は、あなたが自分自身を見つけるのを助けてくれる、最も誠実な友人なのです。
豊かな人生を紡ぐための小さな行動と美しい場所への誘い
今回の内容の重要な視点を3つに集約いたします。
1つ目は、脳を喜びで満たし、生命の根源的な力を呼び覚ますということです。
最新の脳科学(神経美学)の研究では、私たちが美しいものに触れて心が動くとき、脳内の報酬系が活性化し、深い多幸感をもたらすことが分かっています。アートを習慣にすることは、単なる趣味の領域を超え、自分自身の脳に「生きる喜び」を直接届ける、極めて本質的な生命のメンテナンスなのです。
2つ目は、知識という鎧を脱ぎ捨て、ありのままの自分を肯定する練習になることです。
「正解を求めなければ」というプレッシャーは、時に感性の自由を奪ってしまいます。巨匠たちが説いたように、意味や理屈を手放して「自分はこう感じる」という直感を大切にすることは、究極の自己肯定トレーニングになります。アートの前で自分の感覚を信じ抜く体験は、日常における揺るぎない自信へと繋がっていくはずです。
そして3つ目は、わずか5分間の積み重ねが、しなやかで強い心の土台(レジリエンス)を築くということです。
日常の喧騒から離れ、美しさにのみ没入する時間は、脳の過度な緊張を解きほぐし、ストレスに対する回復力を高めます。この小さな「内面への旅」を習慣化することで、どんなに変化の激しい日々の中でも自分を失わず、心穏やかに歩み続けるための確かな基盤が作られていくのです。
これらを日常に溶け込ませるために、もうひとつだけ小さなきっかけを。今日、身のまわりにあるものの中で、ふと触れてみたいと感じるものをひとつ選んでみてください。それを手に取り、1分ほど、ただ触れてみる。温度や重さ、表面のなめらかさやざらつきに、静かに意識を向けてみるのです。何かを考えなくて大丈夫です。ただ「こういう感触なんだ」と感じる、そのままを受け取る。そのわずかな時間が、気づかないうちに内側の緊張をほどいてくれます。
米国の詩人であり、自らの言葉を通じて人間の尊厳と魂の解放を描き続けたマヤ・アンジェロウは、「創造性は使い果たすことができないものです。使えば使うほど、それはより豊かに湧き出てくるものなのです」という、希望に満ちた真理を遺しています。私たちは日々の中で、自分の感性が鈍ってしまったように感じたり、心の余裕が底をついたりするように思うことがあるかもしれません。しかし、彼女が説くように、美に触れ、心の内側を動かす営みは、使えば減る資源ではなく、むしろ使えば使うほど新たな活力が溢れ出す無限の源泉なのです。
アートという鏡を通じて、自分だけの「美しさ」を再発見する時間は、あなたの中に眠る未知の可能性を耕し、広げていくプロセスに他なりません。この言葉が示すように、あなたの感性に限界はなく、年齢や環境に縛られることもありません。焦らず、ご自身のペースで美と向き合うささやかな習慣が、やがて人生という長い旅路を支える、強固で豊かな心の土台へと繋がっていくはずです。
最後になりますが、ご自身の感性を穏やかに開くための素晴らしい場所として、青森県十和田市にある「十和田市現代美術館」をご紹介いたします。こちらの美術館の最大の特徴は、街全体がアートの一部であるかのように設計された、圧倒的な開放感と遊び心あふれる空間構成です。建築家の西沢立衛氏によって設計されたこの建物は、大小さまざまな白い展示室(ボックス)が、透明なガラスの回廊で軽やかに繋がっています。まるで小さな街を散策しているかのようなリズムで、光を感じながら歩みを進めることができます。
館内には、ロン・ミュエク氏による高さ4メートルにも及ぶ『スタンディング・ウーマン』をはじめ、世界的なアーティストたちの作品が各展示室に一点ずつ贅沢に配置されています。作品と一対一で、誰にも邪魔されずに深く向き合うための最高の環境が整っています。また、建物の壁面や向かいの広場にまで色彩豊かなアートが溢れ出し、四季折々の十和田の自然や街並みと共鳴し合う様子は、まさに五感を研ぎ澄ますウェルビーイング体験と言えるでしょう。境界線を感じさせないこの場所は、日常の枠組みから解き放たれ、ご自身の自由な感性を取り戻すための、特別な時間を提供してくれます。

最後に、あなたへ大切なメッセージをお伝えします。
愛と使命を両立するあなたへ。
私たちがこの世に生まれてきた理由は、
決して苦しんだり、人を恨んだり悲しんだり、傷つけ合ったりするためではありません。
命とは、喜びを味わうために生まれきてきたものです。
命の温かさを感じ、知り、「生きててよかった」とほっとして、安心してニコニコ笑うために生まれてきたのです。
私たちは、絶対的に今世の命を楽しむべきなのです。
『愛のある場所でこそ、人は生きる力を得る。』
『人生とは、喜びという宝物を探す旅である。』
『温かな感情は体温を上げ、人を幸せへ導く。』
どうぞ忘れないでください。
『あなたは、神様がつくった最高傑作』です。
あなたの命が、これからも喜びというパワフルなエネルギーで満たされ、温かな笑顔とともに輝き続けることを心から願っています。

私は、「人は幸せになるためにのみ、この世に送り出された」という揺るぎない確信を持ったアーティストです。
愛や喜びは、抽象的な概念などではなく、私たちの「生命維持に不可欠な根源」だと考えています。
だからこそ、私のアートやメッセージには、あなたの存在そのものを絶対的な価値として全肯定するエネルギーを込めています。
あなたがいつも、大いなる愛と光に守られていますように。
そして、あなたの大切な命の時間が、たくさんの幸運と共にありますように。
nao
【参考情報・引用元】
- Biennale di Venezia (60th International Art Exhibition - Stranieri Ovunque - Foreigners Everywhere)
- The Metropolitan Museum of Art (Your Met Artwell: A Guide to Looking at Art for Wellbeing)
- 京都国立近代美術館 (美術館を拠点とする「アートとウェルビーイング」プロジェクト)
- The Marginalian(Kurt Vonnegut on Art and Why We Create)
- NPR Kurt Vonnegut's Advice to Students: Practice Any Art... To Make Your Soul Grow
- The Huntington (About Henry E. Huntington)
- Los Angeles Times (The Huntington at 100: How a railroad tycoon’s private library became a public treasure)
- California Historical Society (Henry Edwards Huntington: A Biography)
- Letters of Note Make Your Soul Grow
- 長崎県美術館(美術館について / 建築コンセプト・須磨コレクションについて)
- The Baltimore Museum of Art(The Cone Collection: Matisse, Picasso, and the Avant-Garde)
- Crystal Bridges Museum of American Art(About Alice Walton and the Museum's Founding)
- The Getty(Getty Center Architecture and Gardens: The Central Garden by Robert Irwin)
- Royal Collection Trust (Victoria & Albert: Art & Love)
- National Portrait Gallery (Queen Victoria's Watercolours)
- The Guardian (Queen Victoria: the secret artist)
- BBC News (Queen Victoria's private sketches go on display)
- World Health Organization (WHO)(What is the evidence on the role of the arts in improving health and well-being? A scoping review)
- Drexel University / Drexel University News(Drexel Study: Making Art is Good for Your Health - Reduction of Cortisol)
- NTNU - Norwegian University of Science and Technology(The HUNT Study: Cultural Participation and Life Satisfaction Findings)
- The Huntington Library, Art Museum, and Botanical Gardens(About Henry Edwards Huntington)
- The Courtauld Institute of Art(About Samuel Courtauld: The Man and the Collection)
- Henry Moore Foundation(The Philosophy of Henry Moore: "To be an artist is to believe in life")
- Classic FM(Beverly Sills: "Art is the signature of civilizations" and other quotes)
- Royal Collection Trust(Queen Victoria and Watercolours)
- Smithsonian Magazine(Painting With Penicillin: Alexander Fleming’s Germ Art)
- Warner Bros. Japan(映画『マイ・インターン』公式サイト)
- Wikipedia(ヴィクトリア (イギリス女王) / アレクサンダー・フレミング)
- Physics Today(Richard Feynman, artist)
- The Kid Should See This(Richard Feynman on the beauty of a flower)
- BBC(Feynman’s art: The physicist who wanted to draw the beauty of the world)
- Ashmolean Museum(John Ruskin: The Power of Seeing)
- The Ruskin - Library, Museum and Research Centre(The Innocence of the Eye)
- National Portrait Gallery(John Ruskin and his influence on seeing)
- The Courtauld (Samuel Courtauld)
- National Gallery (Samuel Courtauld)
- ArtUK (Samuel Courtauld: the man who brought the Impressionists to Britain)
- The Art Story (Marc Chagall Life and Legacy)
- Marc Chagall.org (Marc Chagall Quotes)
- The Menil Collection About Dominique and John de Menil
- The New York Times Dominique de Menil, 89, Dies; Philanthropist and Art Collector
- Texas Monthly The Saint of Houston
- University of Westminster (Viewing art on your lunch break can lower stress levels)
- Harvard Health Publishing (The healing power of art)
- The Menil Collection About the Menil
- The New York Times Dominique de Menil, 89, Dies; Philanthropist and Art Collector
- Architectural Digest The Menil Collection: A Masterpiece of Natural Light and Art
- Maya Angelou Official Site (Quotes)
- Forbes (Maya Angelou’s Best Quotes On Success And Creativity)
- 十和田市現代美術館 建築について
- 青森県観光情報サイト 十和田市現代美術館
- Forbes The 10 Best Maya Angelou Quotes On Success And Creativity
- Poetry Foundation Maya Angelou
- Goalcast 20 Empowering Maya Angelou Quotes to Inspire Your Life





