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起業家が「燃え尽きやすい」本当の理由
―成果が出ている人ほど要注意な心理構造
「頑張れる人」ほど、静かに限界へ近づく
起業家として走り続けている方ほど、ある日ふと
「結果は出ているのに、なぜか心が動かない」
そんな感覚に戸惑うことがあります。
私自身、アーティストとして、また起業家として多くの方と向き合う中で感じてきました。
バーンアウトは、怠けや弱さから起きるものではありません。
むしろそれは、「誠実さ」と「責任感」を持つ人ほど陥りやすい状態なのです。
起業家に特有の「自己概念=仕事」問題
心理学的に見ると、起業家は
「自分という存在」と「仕事での成果」が強く結びつきやすい傾向があります。
これは一時的には大きな推進力になります。
しかし同時に、成果が揺らいだ瞬間、
自己価値そのものが揺らぐ危うさも抱えます。
「もっと成果を出さなければ」
「止まったら価値がなくなる気がする」
こうした思考が無意識に続くと、心と神経は常に緊張状態に置かれます。

扁桃体が主導権を握ると、創造性は静かに失われる
神経科学では、慢性的なストレス状態が続くと、
脳の「扁桃体」が過剰に働くことが分かっています。
扁桃体は危険察知の中枢です。
ここが優位になると、判断は防衛的になり、
本来の「創造性」「柔軟性」「直感」は後回しにされます。
それでも起業家は走り続けてしまう。
なぜなら、過去の成功体験が
「自分はまだいける」という錯覚を生むからです。
「達成感依存」が生む、見えない疲弊
もう一つ重要なのが、「脳内ドーパミン」の問題です。
成果が出るたびに分泌されるドーパミンは、
行動のモチベーションを高めてくれます。
しかしこれが続くと、
「達成していない状態」に強い不安を感じるようになります。
つまり、
「頑張っていない自分を許せない」状態です。
このとき、人は疲れていることに気づけません。
気力はあるのに、喜びが薄れていく。
これがバーンアウトの初期サインです。
燃え尽きの始まりは「喜びの欠如」
naoとして、これまで多くの起業家の方と対話してきました。
共通しているのは、燃え尽きる直前ほど
「外からは順調に見える」という点です。
売上は伸びている。
評価もある。
でも、心が動かない。
これは失敗ではありません。
むしろ、「整え直すタイミングが来た」というサインです。

燃え尽きを防ぐ「メンタル設計」という発想
―頑張り続ける前に、整えるという選択
成果より先に「状態」を設計するという考え方
起業家の多くは、無意識のうちに
「成果が出てから休む」
「結果が整えば心も整う」
という順番で物事を捉えがちです。
けれど実際には、その逆が起きています。
「状態が整っているからこそ、成果が自然に続く」。
この視点への切り替えが、バーンアウトを防ぐ最大の鍵になります。
Mermaid naoとして活動する中で、
「どれだけ動いたか」よりも
「どんな状態で世界と関わっているか」
が、人生の質を大きく左右することを実感してきました。
ON/OFFではなく「リズム」で自分を扱う
多くの人が誤解しているのが、
休息=完全なOFF
だという考え方です。
神経科学的に見ると、重要なのは
「止まること」ではなく
「回復が起きるリズム」を日常に組み込むことです。
副交感神経が働くタイミングを意識的に挟むことで、
心と脳は「回復しながら進む」状態に入ります。
ここで大切なのは、
「長く休む」ことではありません。
3分、5分の「マイクロレスト」を
意図的に重ねることです。
「行動エネルギー」と「静的エネルギー」のバランス
成果を出し続ける人ほど、
行動エネルギー(考える・決める・動く)に偏りがちです。
しかし、創造性や直感、判断の深さは、
「静的エネルギー」
――感じる、余白を持つ、ぼんやりする時間
から生まれます。
この2つが循環している状態こそ、
持続可能な働き方の本質です。
「何もしていない時間=無駄」
ではなく、
「次の飛躍を育てている時間」
として再定義することが必要です。

自分の価値を「成果」から切り離す勇気
バーンアウトを防ぐメンタル設計で、
最も重要なのがここです。
自分の価値を
「売上」「評価」「数字」
から切り離し、
「今の自分の在り方」へ戻すこと。
心理学ではこれを
「Being-based self-worth(状態ベースの自己価値)」
と呼びます。
成果があってもなくても、
自分の存在はすでに許されている。
この感覚が戻ったとき、
心には静かな余裕が生まれます。
「意味の棚卸し」がエネルギーを回復させる
naoとして対話を重ねる中で感じるのは、
燃え尽きの根本原因は
「忙しさ」ではなく
「意味のズレ」であることです。
なぜ、これをやっているのか。
誰のために、どんな世界を見たいのか。
定期的にこの問いに立ち返ることで、
エネルギーは自然と再調律されます。
目標の更新より先に、
「意味の棚卸し」を行う。
それだけで、行動の質は大きく変わります。
余白は「弱さ」ではなく、戦略
空白、沈黙、無目的な時間。
これらは決して甘えではありません。
むしろ、
「余白を持てる人ほど、決断が深くなる」。
これは神経科学・経営心理の両面から支持されています。
余白は、
次の一手を「正確に選ぶための視野」
を取り戻してくれます。

神経科学が示す「回復と集中」の正しいサイクル
―走り続ける人ほど、休み方を設計する
集中力は「気合」ではなく脳のリズムで決まる
多くの起業家が誤解しているのが、
集中力は意志の強さで維持できる、という考え方です。
神経科学の視点では、集中とは
「前頭前野が適切に働いている状態」にすぎません。
そしてこの状態は、永続的には続かないように設計されています。
研究では、深い集中が持続するのはおよそ90〜120分。
長くても3時間が限界だとされています。
それ以上は、脳が疲れているのではなく、
「回復のタイミングを逃している」状態です。
回復は「止まる」ことで起きるのではない
重要なのは、
回復=完全に何もしないこと
ではない、という点です。
脳は休息中に
「デフォルトモードネットワーク(DMN)」
と呼ばれる内省・統合回路を活性化させます。
このとき、
・情報の整理
・感情の消化
・直感的ひらめき
が同時に起こります。
つまり、
「ぼーっとする時間」こそが
創造性と判断力を回復させる中核なのです。
呼吸が脳のスイッチを切り替える
回復と集中の切り替えに、
最も即効性があるのが呼吸です。
呼吸リズムをゆっくり整えるだけで、
前頭前野への血流が改善し、
判断の質が回復することが分かっています。
特に有効なのは、
吸うよりも「吐く時間」を長くする呼吸。
これは副交感神経を優位にし、
脳に「安全」の信号を送ります。
naoとしてセッションを行う中でも、
短時間の呼吸調整だけで
表情や声のトーンが変わる瞬間を
何度も目にしてきました。

セロトニンとコルチゾールのバランス
バーンアウトに近づく人の多くは、
コルチゾール(ストレスホルモン)が高止まりし、
セロトニン(安定ホルモン)が不足しています。
この2つは対立関係ではなく、
「リズムで補完し合う関係」です。
活動→回復→活動
という自然な流れが保たれていれば、
ホルモンは自動的に調整されます。
問題は、
「回復を後回しにする習慣」
そのものなのです。
自然・身体・動きが脳を再起動する理由
神経科学では、
自然接触・軽い運動・深い呼吸
が脳内BDNF(神経成長因子)を増やすことが分かっています。
これは、
「疲れにくい脳」
を育てる物質です。
短い散歩、窓の外の緑を見る、
身体をゆっくり動かす。
それだけで、脳は再び柔軟性を取り戻します。
Mermaid naoのアートが
「見るだけで呼吸が深くなる」
と言われるのも、
この神経反応と深く関係しています。
走り続ける人ほど、休息を戦略にする
神経経営学では、
「最も成果を出し続ける人ほど、休息を計画に組み込む」
とされています。
休むかどうか、ではなく、
「いつ、どのように回復するか」。
この視点を持った瞬間、働き方は根本から変わります。

起業家が「燃え尽きる前」に整える3つのポイント
―成果の前に「在り方」を取り戻す
人生と仕事が同時に軽くなる瞬間
ここまで、心理構造・メンタル設計・神経科学の視点から
「なぜ燃え尽きが起こるのか」を見てきました。
最終章では、Naoとして、そしてMermaid naoとして
多くのセッションや制作を通して実感してきた
「本当に人生が動き出す整え方」を、
3つのポイントに凝縮してお伝えします。
どれも特別な才能や努力は必要ありません。
必要なのは、「自分の中心に戻ること」です。
ポイント①|心の定点観測を持つ
最初に整えるべきは、思考ではなく観測点です。
人は疲れてくると、
「考えていること」と「感じていること」の差に
気づけなくなります。
おすすめなのは、1日の終わりに
「今日はどんな感情が一番長く滞在していたか」
を静かに振り返ること。
感情を修正しようとせず、
ただ眺める。
この「定点観測」ができるようになると、
心は自然に落ち着きを取り戻します。
「感情は敵ではなく、今の状態を知らせるサイン」
この理解が、回復の第一歩です。
ポイント②|エネルギーをKPIにする
多くの人が、時間や成果を管理しようとします。
しかし、最も重要なのは
「今、自分にどれくらいの余力があるか」です。
エネルギーが枯れた状態での努力は、
長期的には必ず歪みを生みます。
ここで意識したいのが、
「生産性」ではなく「回復力」。
・今日は呼吸が深いか
・身体が緊張していないか
・心に余白があるか
これらを基準に予定を調整するだけで、
仕事の質は驚くほど変わります。
「余白は甘えではなく、創造の源」
そう捉えた瞬間、働き方は次元を変えます。

ポイント③|人間関係を「心地よく選ぶ」
最後のポイントは、人との関わり方です。
燃え尽きやすい人ほど、
無意識にエネルギーを消耗する関係を
抱え続けています。
大切なのは、数ではなく質。
・話した後に呼吸が楽になるか
・本音を隠さずにいられるか
・沈黙さえ心地よいか
この感覚を基準に、人間関係を見直すと、
心の回復スピードは一気に高まります。
「存在を肯定し合える関係」
それこそが、持続的な成功を支える土台です。
燃え尽きる前に、立ち止まれる強さ
燃え尽き寸前のサインは、
「気力はあるのに、心が動かない」状態。
そのとき必要なのは、
もっと頑張ることではありません。
「整える」という選択です。
Mermaid naoのアートが
「眺めるだけで中心に戻れる」と言われるのは、
この「整う感覚」を視覚と感覚で思い出させるから。
あなたがあなたに戻るとき、
人生と仕事は、再び自然に流れ始めます。






