
わたしは絵を描くとき、いくつかの画材を層のように重ねていきます。そのひとつが、日本画で使う「岩絵の具(いわえのぐ)」です。
祖母は日本画を描く人で、その絵はいまも、わたしの家の和室にかけてあります。岩絵の具は、わたしにとって少し特別な画材です。
石を砕いた粉が、そのまま色になる
天然の岩絵の具は、鉱物を砕いた粉です。着色料を混ぜているのではなく、石そのものの色を使います。
原料になる鉱石はおよそ40種類。それを砕いて、粒の大きさで10段階ほどに分け、全部で400〜500色ほどになると言われています。
青の「群青(ぐんじょう)」は藍銅鉱(アズライト)、緑の「緑青(ろくしょう)」は孔雀石(マラカイト)、赤みの「弁柄(べんがら)」は酸化鉄からつくられます。色の名前が、そのまま石の名前とつながっています。
膠(にかわ)で溶いて、紙にとめる
岩絵の具は、粉のままでは紙に定着しません。「膠」という接着剤で溶いて使います。膠は、動物の皮や骨を煮出してつくる、古くからの接着剤です。
膠の濃さ、溶く量、その日の湿度や気温で、絵の具ののび方や乾き方が変わります。同じ色でも、日によって少し違う顔になります。
粒の大きさで、同じ色が別の色になる
岩絵の具は、粒が粗いほど濃く深く沈み、細かいほど淡く明るくなります。同じ鉱石から取った色でも、番号(粒の大きさ)が違えば、見え方がまるで変わります。
だから日本画では、色を「混ぜてつくる」より、「選んで、重ねる」という感覚に近い場面があります。
新岩絵の具と、水干絵具
天然の鉱物は数がかぎられ、高価なものもあります。それを補うのが「新岩絵の具」です。色ガラス(フリット)に金属酸化物を混ぜ、700〜1000度で焼いてつくります。品質が安定し、色数も多く、1952年ごろから広く使われるようになりました。
もうひとつ「水干絵具(すいひえのぐ)」は、土や、貝殻からつくる胡粉(ごふん)に染料を加えたもので、下塗りや広い面によく使います。

1300年前と、同じ色を使う
奈良県の高松塚古墳の壁画には、いまの緑青と同じ成分の顔料が使われていたことがわかっています。1300年以上前の人が使った色を、いま自分の手でも溶いて使える、ということです。
岩絵の具は、正直に言えば手間のかかる画材です。溶くのに時間がかかり、思いどおりにいかない日もあります。
それでも、石を溶いている時間そのものが、描くことの一部になっていきます。手を動かしている間の静けさが、わたしにとっては、生きていくうえで必要な時間になっています。
Mermaid nao のオーダーアートでも、こうした日本画の画材を、他の素材と重ねて使うことがあります。
【参考にした情報・引用元】
京都芸術大学 通信教育課程ブログ(【日本画コース】素材編①〜天然の鉱物を砕いて作る、岩絵具〜)
ナカガワ胡粉絵具株式会社(岩絵具の粒状性について/日本画をはじめる)
ウィキペディア(岩絵具)
https://www.kyoto-art.ac.jp/t-blog/?p=99296
https://www.nakagawa-gofun.co.jp/begin/grain.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/岩絵具
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