「星月夜」は、本当の夜明けの空だった? ― ゴッホとボブ・ロスさん、絵が生まれた物語

山形は、朝の空気がすっかり冬に近づいてきました。先日の朝は、「今日は満月なんだ」と気づいて、空のことを考えていました。そんな朝に、絵と空にまつわるニュースをふたつ読みました。ゴッホの「星月夜」が、実際の夜明けの空をもとにしていたのではないかという研究と、ボブ・ロスさんの一枚が、ドイツで初めてオークションに出るという話です。どちらも、絵が生まれたときの物語が、いまも人をひきつけている話でした。

「星月夜」は、1889年7月の夜明けの空?

「星月夜」は、ゴッホが1889年、南フランスのサン=レミで描いた絵です。うずを巻く夜空に、大きく光る星と、細い月がえがかれています。いまはニューヨーク近代美術館(MoMA)の所蔵で、世界でいちばんよく知られた夜空の絵のひとつです。

2026年10月、韓国のエリヤ・ジョンヒョン・キムさんたちの研究チームが、科学誌『Scientific Reports』に論文を発表しました。キムさんは、ソウルで望遠鏡をつくる会社を経営しながら、慶熙(キョンヒ)大学の博士課程で学んでいる方です。チームは、1889年の6月と7月の夜空を一晩ずつ再現し、絵の中の月や星の位置とくらべました。

その結果、7月22日ごろの夜明け前、東の空に、細い月と金星、おうし座のヒアデス星団が、ちょうど絵の範囲におさまることがわかったそうです。これまで、絵は6月に描かれたと考えられてきましたが、そのころの月は、絵のような細い形ではありませんでした。チームは、ゴッホが弟テオと交わした手紙に出てくるセミの記述なども手がかりにしています。

ゴッホは1889年の初夏、テオへの手紙に、日の出よりずっと前に部屋の窓から景色を見たこと、そこには、とても大きく見える明けの明星だけがあったことを書いています。研究に加わっていないメキシコ国立自治大学の物理学者、ホセ・ルイス・アラゴンさんは、この論文を「ていねいで、本当に分野をこえた研究」と評価し、「この絵は、ただの空想ではない」と話しています。いくつもの夜を重ねて描いた可能性もあり、日付はまだひとつの説だそうですが、ゴッホが本当に空をよく見ていたことが、あらためて伝わってきます。

テレビの中で描かれた一枚が、ドイツへ

もうひとつは、ボブ・ロスさんの話です。ボブ・ロスさんは、アメリカの公共テレビ番組「The Joy of Painting(ボブの絵画教室)」で、30分ほどの番組の中で、1枚の風景画を描きあげる姿を見せてきた画家です。番組は1983年に始まり、いまも世界中で見られています。

2026年12月5日、ミュンヘンのオークション会社ケッテラー・クンストで、ボブ・ロスさんの「Mountain Splendor(山の輝き)」(1986年)が競売にかけられます。ドイツでボブ・ロスさんの絵がオークションに出るのは、これが初めてです。番組のシーズン7・第8話で、カメラの前で描かれた油彩画で、予想価格は4万〜6万ユーロとされています。オークションの前には、フランクフルト、ケルン、ハンブルク、ベルリン、ミュンヘンで下見会もひらかれます。

この絵は、ボブ・ロス社がアメリカン・パブリック・テレビジョン(APT)に寄贈した30点のうちの1点です。売り上げの全額(経費をのぞく)は、全米の公共テレビ局の支援にあてられます。これまでに13点が売れて、240万ドルをこえる支援になりました。ドイツでは2001年から番組が放送されていて、ボブ・ロス社のジョアン・コワルスキーさんは「ボブは、アートをみんなと分かちあいたかった」と話しています。テレビの前で絵を描いて見せてきた人の一枚が、いまもまた、たくさんの人を支えているのだと思います。

絵の前で立ちどまる理由

「星月夜」も「Mountain Splendor」も、絵だけを見ても美しい作品です。それでも、窓から明けの明星を見ていた朝のことや、テレビの前の人に向けて描いた時間のことを知ると、同じ絵が少しちがって見えてきます。どこで、どんな気持ちで、だれに向けて描かれたのか。その物語が、見る人を絵の前に立ちどまらせるのだと思います。

わたしのオーダーアートは、描く前に、その方のお話をうかがうところから始まります。大切にしてきたこと、これからのこと。そのお話が、一枚の色と形のもとになります。作品をお渡しするときには、どんな想いから生まれた絵なのかを、ことばでも添えています。絵がどこで生まれ、だれのもとで過ごしてきたかという記録は、時間がたつほど、その絵の大切な一部になっていきます。

ご自身や大切な方のための一枚はPERSONAL ORDER ART、会社や医院のための一枚はBUSINESS ARTのページにまとめています。

まとめ

  • 2026年の研究で、「星月夜」の空は1889年7月22日ごろの夜明け前の空と重なる、という説が出された
  • ゴッホは、窓から明けの明星を見た朝のことを、弟テオへの手紙に書いている
  • ボブ・ロスさんが番組で描いた「Mountain Splendor」が、12月5日にドイツで初めてオークションに出る。売り上げは公共テレビの支援に
  • 絵が生まれた物語は、時間がたつほど、その絵の大切な一部になる

【参考にした情報・引用元】

Scientific Reports(The actual sky of Van Gogh’s Starry Night: a multidisciplinary reconstruction)2026年
Phys.org(New study traces van Gogh’s famed ‘Starry Night’ to an actual night sky from 1889)2026年10月
Space.com(Van Gogh’s ‘The Starry Night’ depicts the sky on July 22, 1889, researchers find)2026年10月
Van Gogh Letters(Letter 777, To Theo van Gogh. Saint-Rémy-de-Provence, 1889)
The Museum of Modern Art(Vincent van Gogh, The Starry Night)
PR Newswire(Bob Ross Original Painting to Be Auctioned in Germany for the First Time to Benefit U.S. Public Television Nationwide)2026年
ARTnews(Even German Bidders Can Now Pitch In to Support US Public Television, with the Country’s First Auction of a Bob Ross Painting)2026年

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