「大人女子」という言い方があります。年齢のことというより、大人としての毎日をちゃんと引き受けながら、好きなものへの気持ちも手放さずにいる人、というくらいの意味で使われているように思います。仕事や家のことで一日が埋まっても、心の奥に「好き」の部屋を残している人です。

「生きがい」は、もともと日常のことばだった

近年、「IKIGAI」という言葉が海外でよく紹介されています。「好きなこと」「得意なこと」「世界が必要とすること」「収入になること」の4つが重なる中心、という図で説明されることが多いです。

ただ、この図はもともと海外でつくられたもので、日本語の「生きがい」とは少しちがうそうです。精神科医の神谷美恵子(かみや みえこ)さんは、1966年の著書「生きがいについて」で、生きがいをもっと素朴なものとして書いています。朝、目が覚めて「今日も生きていよう」と思えること。小さな楽しみがあること。自分がここにいてもいいと感じられること。壮大な目的ではなく、日々の手ざわりの話でした。

飾ることは、自分を大切にする練習になる

「ウェルビーイング」も同じで、特別なことをしなくてもいいのだと思います。よく眠る。あたたかいものを食べる。目に入る場所に、自分の好きなものを置く。

私はアートを描く仕事をしていますが、絵を飾るということは、「自分のために場所をあける」ことでもあると感じています。家族のためでも、来客のためでもなく、自分がいちばん目にする壁に、自分が好きだと思うものをかける。それは小さなことのようで、自分を大切にする練習になります。

あるお客さまは、「見るたびに褒められているような、幸せな気持ちになる」と言ってくださいました。別の方は、絵に使われていた色を服や小物に取り入れるようになって、おしゃれが楽しくなったそうです。飾った一枚が、日々の機嫌をひとつ上げてくれる。そういう働き方をするものだと思っています。

好きを手放さないこと

大人になると、「これは何の役に立つのか」で物事を選びがちになります。でも、役に立たなくても好きなものを、ちゃんと生活の中に置いておくこと。その一角があることが、たぶん生きがいと呼ばれているものに近いのだと思います。


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