
あなたの鼓動は、八百万の祈りに続く命の継承。恐れず、真芯を立て、ただ自らの光を宿せよ。そのとき、蒼天はひらき、岩は開く。
日本神話「天の岩戸」に着想を得た一枚です。太陽神が岩戸に隠れ、世界が闇に包まれる。しかし光は消えたのではなく、ただ姿を潜めていただけ。私はこの神話を「喪失」ではなく「再び現れる光の物語」として捉え、描きました。
作品に込めた想い
自らの命を引き受け、前を向く覚悟を持つ方のための作品です。外界のざわめきに惑わされることなく、自らの鼓動をそのまま抱いて進む方へ。あなたは、日の光の輝きそのものです。あなたが在るという事実そのものが、次の時代を照らす光であることを告げるために描きました。
コンセプト・背景
日本には、土地、水、風、土に神が宿るという八百万の思想があります。神聖さは遠くにあるのではなく、命そのものに宿るという世界観。本作で描いているのは特定の神ではなく、「受け継がれてきた光」そのものです。隠れた太陽が再び昇る場所は、空ではなく、人の内側にある。そして今、その光は再び強く、この時代に差し込もうとしています。
技法・色彩・視覚表現
画面中央に広がる赤は、日の丸を想起させると同時に、生命の鼓動、内なる太陽を象徴しています。中心から放射する光の強度は、静かな光ではなく、時代を押し開くほどのエネルギーを帯びた光。周囲に重ねられた緑や金の層は、大地や草木、水や風の循環を示し、光が孤立した存在ではなく、この土地と連なっていることを表しています。幾層にも重ね、削り、擦る工程は、時間の堆積と記憶の回復を意味しています。
制作にあたって
私たちは孤立した存在ではなく、土地や祖先や神話や祈りの連なりの中に立っています。光は消えません。ただ、隠れるだけです。しかし今、その光は再び強く差し込もうとしている。恐れず、真芯を立て、自らの鼓動を感じたとき、岩戸は内側から開きます。
太陽は空に昇るのではなく、あなたの内に昇る。この作品は、あなたの命がいつも、時代の光と響き合っていることを、力強く示すために生まれました。
この作品は非売品として、大切に手元に置いている一枚です。パーソナルオーダーアートでは、お一人おひとりとの対話を通して、あなただけの一枚を描かせていただきます。作品のご利用について
この作品にまつわる、読みもの
天の岩戸の物語
天の岩戸(あまのいわと)の物語は、712年にまとめられた『古事記』や、720年の『日本書紀』に書かれている日本神話です。
太陽の神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)は、弟の須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴なふるまいを悲しみ、天岩屋戸(あまのいわやと)という洞窟にこもって、岩の戸を閉じてしまいます。すると、天も地も真っ暗になり、さまざまな災いが起こりました。
困った八百万(やおよろず)の神々は、天安河原(あまのやすかわら)に集まって相談します。長鳴鳥(ながなきどり)を鳴かせ、榊(さかき)の枝に鏡と勾玉をかけ、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が岩戸の前で踊ると、神々はどっと笑いました。
外のにぎやかさを不思議に思った天照大御神が、岩戸を少し開けたところを、力の強い天手力男神(あめのたぢからおのかみ)が手を取って外へ導き、世界に再び光が戻った、と語られています。
光は、消えたのではなかった
この物語でわたしが好きなのは、太陽が「なくなった」のではなく、「隠れていた」だけだというところです。
そして、光を取り戻したのは、たったひとりの英雄ではありませんでした。相談する神、鳥を鳴かせる神、鏡をつくる神、踊る神、笑う神、戸を開ける神。たくさんの神々が、それぞれの役目を果たしたことで、岩戸は開きました。
この作品の周りに重ねた緑や金の層は、その「連なり」を表しています。
高千穂に残る、岩戸の伝説
宮崎県高千穂町には、天岩戸神社があり、天照大御神がこもったと伝わる洞窟をご神体としてまつっています。近くの岩屋は、神々が集まって相談した天安河原と伝えられ、訪れた人が小石を積んで願いをかける場所になっています。
高千穂では、神話をもとにした夜神楽が、いまも地域の人たちによって受けつがれています。千年をこえて語りつがれてきた物語が、いまも暮らしの中に生きているのです。
赤い色と、日本の太陽
この作品の中心にある赤は、日の丸を思わせる色です。白地に赤い丸の日章旗は、1999年に「国旗及び国歌に関する法律」で正式に国旗と定められました。
日本では、神社の鳥居や社殿に朱色が多く使われてきました。朱は、命の力や魔除けをあらわす色とされてきたといわれます。太陽の色であり、血の色であり、命の色。この作品の赤には、そうした重なりもこめています。
あなたの岩戸が開くとき
だれにでも、光が見えなくなる時期があります。けれど、天の岩戸の物語が伝えてくれるように、光は消えたわけではなく、少し隠れているだけなのかもしれません。
この絵を前にしたとき、あなたの中の太陽を思い出していただけたらうれしいです。
【参考にした情報・引用元】
『古事記』『日本書紀』(天岩屋戸の段)
高千穂町観光協会(天岩戸神社・天安河原)
e-Gov法令検索(国旗及び国歌に関する法律)

