笑顔と表現が導く生命の歓喜──天宇受売命(あめのうずめのみこと)に学ぶアートとウェルビーイング

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歓喜の笑顔が世界を照らす──表現と調和が導く新たな歩み

私たちが生きる現代において、心と身体の豊かな調和、すなわちウェルビーイングへの関心は、かつてないほどの高まりを見せています。世界各地で、美しい色彩や表現の力が人間の生命力にどのような影響を与えるのか、連日のように喜ばしい報告がもたらされています。

2023年11月24日、東京の新たな文化拠点として麻布台ヒルズギャラリーが開館し、オラファー・エリアソン氏の素晴らしい展覧会が始まりました。光や水を効果的に用いた表現を通じて、人間と自然環境の深いつながりを体感する空間が提供され、訪れる人々に大きな感動を与えました。

続いて2024年3月12日には、国立西洋美術館において、同館初となる現代美術の企画展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」が開幕しました。歴史的な作品と現代の表現が交差する空間で、記憶や感情に真っ直ぐに向き合う意義が社会に向けて力強く提示され、大きな反響を呼びました。

さらに2024年5月21日、東京国立近代美術館にて「トリオ パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」展が始まりました。3つの都市の美術館が協働し、共通の主題で作品を並置することで、異なる文化や時代を越えた人間の普遍的な感情の響き合いが広く公開され、表現の持つ大いなる力が実証されました。

これらの事象は、私たちが本能的に美しいものを求め、そこから生きる力を得ている事実を明確に裏付けています。現在この文章に目を留めてくださっているあなたは、ご自身の人生における「生きがい」や「生きている意義」、そして心震える「喜び」や「感動」を何よりも大切になさっていることでしょう。義務や責任を果たすだけでなく、より自分らしい人生を心から楽しみたい、生命の温かさを存分に味わい尽くしたいという、美しく尊い願いを胸に抱いておられるはずです。

私はこれまで、数多くの色彩や造形を通じて、人間の命が本来持っている温かな輝きを表現し続けてきました。作品に込めているのは、あなたという存在そのものが宇宙の最高傑作であり、ただ生きているだけで素晴らしいという全肯定のエネルギーです。

時には、これからの人生でどの道を歩むべきか、ふと立ち止まる転機が訪れることがあるかもしれません。そのような時、日本神話において天岩戸を開き、世界に光を取り戻した「天宇受売命(あめのうずめのみこと)」の存在が、私たちに力強い勇気を与えてくれます。彼女は、計算や理屈ではなく、ただ純粋な喜びと無邪気な笑顔によって、行き詰まった状況を見事に打ち破りました。

世界的な名声を集めた俳優であり、後年は多くの慈善活動に尽力したオードリー・ヘプバーン氏は、「美しい瞳であるためには、他人の美点を探しなさい。美しい唇であるためには、美しい言葉を使いなさい」という言葉を残しました。彼女もまた、日常の中にある美しさを見つめ、それを自らの生き方に反映させることで、世界中に愛と調和をもたらした人物です。

この記事では、天宇受売命の力強いエピソードを辿りながら、アートとウェルビーイングがどのように私たちの人生を豊かに彩り、生命エネルギーを循環させていくのかを紐解いていきます。読み終える頃には、あなたの心の中にある生命の歓喜が優しく呼び覚まされ、明日への力強い一歩を踏み出すための温かな活力が満ち溢れていることでしょう。

岩戸を開く無邪気な力──生命の躍動と感情の解放

私たちが真に心身が満たされた状態、すなわちウェルビーイングを実現するためには、自分自身の内側に眠る生命エネルギーの存在に気づき、それを滞りなく循環させることが不可欠です。アートとは、単に壁に掛けられた装飾品や、美術館に展示された物体を指す言葉ではありません。それは、作者が込めた命のエネルギーと、それを受け取るあなたの命のエネルギーが交差する、目に見えない神聖なやり取りの場なのです。

日本神話における天岩戸(あまのいわと)の物語には、私たちが人生の転機においてどのように自己のエネルギーを扱い、道を切り開いていくべきかという深い示唆が隠されています。太陽の神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)が深い悲しみから岩戸の中に引きこもってしまった時、世界は真っ暗な闇に包まれ、あらゆる災いが起こりました。八百万(やおよろず)の神々は川原に集まり、どうすれば光を取り戻せるのかと途方に暮れていました。

その重苦しい空気の中で、1人の女神が進み出ます。それが天宇受売命です。彼女は伏せた桶の上に立ち、胸を露わにし、力強く足拍子を踏み鳴らしながら、無我夢中で滑稽な舞を披露しました。その一切の飾りを捨てた、ありのままの生命力あふれる姿を見た八百万の神々は、不安も恐れも忘れ、どっと大声で笑い崩れました。高天原(たかまがはら)全体が揺れるほどの大きな笑い声と歓喜の渦が巻き起こったのです。

「自分が隠れて世界は闇に包まれているはずなのに、なぜ外はこんなにも楽しそうなのか」。不思議に思った天照大御神が少しだけ岩戸を開けた瞬間、世界に再び眩い光が差し込みました。

私たちが人生を歩む中で、不安や重圧に押しつぶされそうになり、自分の殻に閉じこもってしまうことは何度もあります。これまでのやり方が通用しなくなり、新しい価値観へと移行しなければならない時、私たちは深い停滞を感じます。しかし、天宇受売命が放っていた力は、深刻な顔をして論理的な解決策を探すことではありませんでした。それは、自らの存在意義を完全に肯定し、「私は生きている」という内なる生命エネルギーを、一切隠すことなく放ち、いのちの歓びに満ちて微笑む姿の象徴なのです。周囲の目を気にして自分を小さく見せるのではなく、持てる感情を堂々と輝かせることが、結果として自らを導き、世界に光をもたらす最大の力となります。

この「自らの感情を隠さない」という姿勢の重要性を、自らの人生を通じて体現した歴史上の人物がいます。昭和の時代に巨大なエネルギー事業を築き上げた出光佐三氏です。彼は第二次世界大戦後、海外の資産をすべて失い、莫大な借金と大勢の従業員を抱えるという、まさに世界が暗闇に沈むような絶望的な状況に直面しました。

その苦難の時代、出光佐三氏の心を救い、再び立ち上がるための原動力となったのは、江戸時代の禅僧である仙厓義梵(せんがいぎぼん)氏が描いた、ユーモアにあふれる書画の数々でした。仙厓氏の作品は、堅苦しい規則にとらわれず、丸や三角、四角といった自由奔放な形や、愛嬌のある蛙や布袋の姿を伸び伸びと描いたものです。出光佐三氏は、世間の権威や評価には一切目もくれず、ただその作品が放つ「常識にとらわれない無邪気な笑い」と「大らかな生命力」に深く共鳴しました。

彼は苦境に立たされるたびに仙厓氏の書画を眺め、天宇受売命の舞を見た神々のように、凝り固まった心をほぐして笑顔を取り戻しました。理屈ではなく、心が震えるような純粋な感動と笑いが、彼の内面に強力なエネルギーを注ぎ込み、絶望的な状況を覆すためのとてつもない活力を生み出したのです。

仙厓氏の作品から受け取った「どんな状況にもとらわれない大らかな心」は、出光佐三氏の明確な行動となって現れました。彼は、莫大な借金を抱える中でも「共に苦労を分かち合う従業員は1人も解雇しない」と強い意志を持って決断します。そして、会社を存続させるために、本来の事業とは全く関係のないラジオの修理や、旧海軍が残した巨大なタンクの底に溜まった泥まみれの残油を素手でかき出して回収するという、想像を絶する過酷な作業を自ら先頭に立って引き受けました。そのような泥臭く困難な道のりの中でも、仙厓氏が描いた布袋のようにおおらかな笑顔とユーモアを失うことなく、前を向き続けたのです。

その真っ直ぐな生命エネルギーと行動力は、やがて周囲の大きな共鳴を呼び起こし、社会全体を動かす力へと変わっていきました。泥まみれの油回収作業から立ち上がった事業は見事な回復を遂げ、1953年には、大国の圧力をはねのけて独自の航路で海を渡り、海外から直接エネルギーを買い付けるという、世界中を驚かせる歴史的な偉業を成し遂げました。

さらに出光佐三氏は、自らを絶望の淵から救い出してくれた仙厓氏の書画をはじめとする素晴らしいコレクションがもたらす歓喜の輪を、より多くの人々へと広げていきました。1966年、東京の皇居を見渡す素晴らしい場所に美術館を創設し、その生命力に満ちた作品群を誰もが鑑賞できるように広く一般に公開したのです。自らの心を癒やし、笑顔を取り戻させてくれた表現のエネルギーを、社会全体へ温かく循環させるという大いなる道を開きました。

美しい絵画や心を揺さぶる表現に触れた時、私たちはなぜ深い安らぎを感じたり、前を向く力をもらえたりするのでしょうか。それは、作品を通じて放たれる作者の純粋な生命エネルギーが、私たちが長い間抑え込んでいた感情の扉を開き、内なる光を共鳴させるからです。出光佐三氏の歩みは、表現から受け取った歓喜のエネルギーが、現実の厚い壁を打ち破り、多くの人々に豊かさをもたらす圧倒的な力となることを見事に証明しています。

天宇受売命が岩戸の前で舞い踊ったように、私たちが心を震わせる表現に出会う瞬間もまた、人生の重要な分岐点です。その出会いは偶然ではなく、あなたの内なるエネルギーが次の段階へと進む準備が整った証拠と言えます。自らの感性が反応する色彩や造形に対して、「なぜこれが好きなのか」という理屈を探す必要はありません。ただ「楽しい」「惹かれる」という純粋な感情をそのまま受け入れること。それが、あなたの心の中に隠れた天照大御神を目覚めさせ、進むべき道を明るく照らし出すための第一歩となるのです。

心の赴くままに舞う──日常を彩る豊かな表現の段階

自らの内なる光に気づいた後、私たちはそのエネルギーをどのようにして日常の中に落とし込み、ウェルビーイングを高めていけばよいのでしょうか。天宇受売命の舞が、単なる個人的な表現にとどまらず、八百万の神々を巻き込む巨大な歓喜の渦となった過程には、私たちが健やかな心身を保ちながら現実世界を生き抜くための、極めて重要な要素が含まれています。

それは、「自己開示」と「喜びの共有」です。天宇受売命は自らの感情や肉体を隠すことなく、ありのままの姿で全力で表現しました。そして神々は、その姿を見て大いに笑い、共に歓喜を分かち合いました。建前や偽りのない、純粋なエネルギー同士のぶつかり合いと調和が、閉ざされた世界を開く大きな道を開いたのです。

この原理を私たちの日常に応用し、より豊かな生活を築くためには、段階的な実践が必要です。

第一の段階は、「自らの感情の動きを認め、全身で受け止めること」です。多くの方は、美しい景色を見たり、心を打たれる造形物に触れたりした時、その感動を胸の内に留めてしまいます。しかし、思い通りにいかない経験を重ねてきた方ほど、感情を外に出すことをためらいがちです。

ここで、人間の無意識を探究し、精神分析の基盤を築いたジークムント・フロイト氏の歩みをご紹介します。彼は革新的な理論を打ち立てる過程で、当時の社会からの激しい批判や、複雑な人間の内面に向き合い続けるという重圧の中にあり、深い疲労や葛藤に直面していました。その彼が、自らの感情を整えるために生涯を通じて深く愛し、手元に集めていたのが、古代のエジプトやギリシャの美しい彫刻や造形物の数々でした。

彼は仕事場の机の上にお気に入りの造形を所狭しと並べ、日々の合間や困難な問題に直面した時、ただその姿と真っ直ぐに向き合う時間を作りました。歴史ある美しい作品群を見つめながら、彼は学問的な論理といった思考を手放し、「この堂々とした姿を見ていると深く安らぐ」「この造形に心が惹かれる」と、自らの内側にある純粋な感情の動きを素直に認めたのです。美しい表現という安全な受け皿に対して自らの感情を開示し受け入れることで、抑圧されていたエネルギーが解放され、深い心の安らぎと、人間の心という新たな世界を解き明かすための豊かな活力を取り戻していったのです。

自らの内面と真っ直ぐに向き合い、感情の波長を整えたこの体験は、やがて彼の画期的な偉業へと直接的に結びついていきました。彼は机の上の古代の造形物を見つめる中で、土の奥深くから美しい遺跡を発掘する過程が、人間の心の奥底に眠る「無意識」を掘り起こし、見えない感情の動きを理解する過程と全く同じであるという大いなる事実に気がついたのです。

造形物から受け取ったインスピレーションは彼の思考を大きく飛躍させ、人間の心に関する数々の重要な著作を書き上げるための揺るぎない原動力となりました。彼の心を支えた古代の造形物は生涯で約3000点にも及び、現在も彼が過ごしたロンドンの書斎に当時のままの姿で残されています。1人の研究者が美しい造形物と真っ直ぐに対話し、自らの感情を素直に認めたささやかな時間が、結果として現代の心理学の基礎を築き、世界中の人々の心を救うための大いなる道を開いたのです。

第二の段階は、「自分が本当に心地よいと感じる空間や表現を、自らの手で創り出すこと」です。ウェルビーイングは、待っていれば与えられるものではありません。天宇受売命が自ら伏せた桶の上に立ち、舞台を創り上げたように、私たちも自らの人生の舞台を整える必要があります。朝起きて最初に目に入る場所に、自分のエネルギーを高めてくれるお気に入りのものを飾る。あるいは、お気に入りの花を活ける。その空間は、あなたがあなた自身の命を歓待するための専用の場所となります。

第三の段階は、「理屈を越えた直感に従って行動し、その喜びを他者と分かち合うこと」です。私たちが「これをやってみたい」「この美しさを誰かに伝えたい」と感じる内なる声は、生命エネルギーからの重要な呼びかけです。

この「喜びを共有する」という精神を見事に体現し、社会全体に大きな活力を与えた人物として、小林一三氏の軌跡をご紹介します。彼は鉄道事業を発展させる中で、人々の生活がただ物理的に便利になるだけでは十分ではないと見抜いていました。日々の労働で疲弊した大衆の心を潤し、明日への活力を生み出すためには、誰もが心から笑い、感動できる「美しい表現の場」が必要だと確信したのです。

そこで彼は、一部の特権階級だけのものであった高価な芸術や娯楽を開放し、誰もが手頃な価格で家族揃って楽しめる華やかな少女歌劇を創設しました。(これが現在も絶大な人気を誇る「宝塚歌劇団(たからづかかげきだん)」の始まりです。)それは当初、温泉施設の室内プールを改装した劇場で披露されたささやかな公演でしたが、彼はそこに大衆の心を照らす大いなる可能性を見出しました。舞台の上で繰り広げられる美しい歌と踊り、西洋と日本の美が美しく融合したきらびやかな衣装は、まさに現代の天宇受売命の舞のように、見る者すべての心に圧倒的な歓喜をもたらしました。

さらに小林一三氏は、「逸翁(いつおう)」という号を用いて茶の湯や古美術を深く愛しました。彼は単に作品を収集するだけでなく、自らの感性で選び抜いた5000点以上にも及ぶ絵画や茶道具を、日々の暮らしの中で実際に使い、深く味わうことを何よりも大切にしていました。そして1957年には、ご自身が暮らした大阪府池田市の美しい邸宅をそのまま美術館(現在の逸翁美術館)として開館させ、ご自身の心を満たしてくれた素晴らしい作品群を、誰もが鑑賞できるように広く一般に公開するという偉大な行動へと繋げました。

小林一三氏は、「清く正しく美しく」という理念のもと、ご自身の愛した美や感動を、社会全体へ歓喜の輪として広げていきました。「時間がないから」「周囲からどう思われるか」といった顕在意識のブレーキを優しく手放し、ご自身の心が弾む方向へ小さな一歩を踏み出し、それを誰かと分かち合ってみる。その行動の積み重ねが、やがて太く力強い人生の道へと繋がっていくのです。

笑顔がもたらす共鳴──内なる光を取り戻した生命の物語

自らの感情を解放し、心地よい環境を整えることで、私たちの日常にはどのような具体的な変化がもたらされるのでしょうか。天宇受売命がもたらした歓喜の渦は、世界に光を取り戻しただけでなく、神々全体の連帯感と生きるエネルギーを根本から蘇らせました。自らの身を置く環境を美しく心地よく整え、そこに喜びを見出すことは、最も輝かしい生命の光を迎え入れるための、極めて重要な準備作業なのです。

ここに、自らの感性に向き合い、人生の大きな変容を遂げたある人物の物語をご紹介します。

昭和の時代に世界的なタイヤメーカーの礎を築き上げた石橋正二郎氏は、常に想像を絶する重圧の中に身を置いていました。数千人という従業員の生活を背負い、激動する社会情勢の中で会社を牽引する責任感の強さから、彼は心身のエネルギーが枯渇していくような張り詰めた緊張状態の連続を経験していました。

そのような状況の中、彼は幼い頃から惹かれていた「美しい絵画」と深く向き合うようになります。多忙な業務の合間を縫って、彼は色鮮やかな西洋の近代絵画や、日本の優れた画家の作品の前に立つ時間を作りました。その日から、深い対話の時間が始まりました。ただ目の前のキャンバスに広がる色彩の波長に身を委ねる時間を持ったのです。

絵を見つめることに集中するにつれ、風景や人物の放つ美しさが自らの心臓の鼓動と重なるのを感じるようになりました。絵の具が混ざり合い、画面に広がる躍動感を見つめることは、彼にとって他の何にも代えがたい安らぎとなりました。絵画から発せられる無言の全肯定のエネルギーを受け取ることで、張り詰めていた心がほぐれ、ご自身の内側にある決して消えることのない生命の光を再確認することができたのです。

この内面的な対話は、明確な行動と心境の変化となって現れました。芸術を通じて精神的な調和を取り戻した石橋正二郎氏は、「世の人々の楽しみと幸福のために」という揺るぎない信念を企業と個人の理念として深く掲げるようになります。そして1952年、自らの心を救い、豊かな活力を与えてくれた3000点以上にも及ぶ素晴らしい作品群を、東京の中心地(京橋)にあるビルの内に美術館として一般公開するという偉大な決断を下しました。

重圧の中で孤独に戦っていた1人の経営者が、美との出会いを通じて自らの心を癒やし、ついにはその喜びを何百万人もの来場者と分かち合う空間へと変容させたこの軌跡は、自らの感性を信じて人生を力強く切り開いた見事な物語と言えます。美しいものに触れ、心を動かされるたびに、あなたの内面には新しい栄養がもたらされます。それはやがて、喜びという名の花を咲かせるための豊かな水源となるのです。自らの命を慈しみ、日常の中に小さな感動を見出すことができるようになった時、私たちは外部の環境に振り回されることなく、自分自身の力で心を潤すことができます。それこそが、本当の意味での豊かな人生、すなわち最高のウェルビーイングを手に入れるということなのです。

理屈を手放し、ただ感じる──心の扉を開くための視点

このように、感性を研ぎ澄まし、心身の調和を目指す過程において、私たちは時に立ち止まり、自らの感覚を疑ってしまうことがあります。ここで、多くの方が陥りやすい誤解を整理し、より自由に心を羽ばたかせるための視点を見つめ直してみましょう。

アートやウェルビーイングに関心を持つ方がよく抱く誤解の1つに、「素晴らしい作品を鑑賞するためには、専門的な知識や高度な教養が不可欠である」というものがあります。「作者の意図を正確に読み取らなければならない」「歴史的な背景を理解していない自分には、楽しむ資格がない」といった思い込みが、純粋な感動の前に高い壁を作ってしまうのです。

しかし、天宇受売命が岩戸の前で舞った時、彼女は複雑な理論や高度な技術を計算して踊ったわけではありません。ただ心の底から湧き上がる衝動に身を任せ、無我夢中で全身を動かしました。そして、それを見た神々も、理屈で解釈したから笑ったのではなく、彼女から放たれる圧倒的な生命力に直接共鳴したからこそ、理性を越えて大笑いしたのです。

日本の近代において、茶の湯や古美術の価値を再発見し、多くの実業家たちに影響を与えた益田孝氏(号:鈍翁)の軌跡は、この「理屈を手放すこと」の価値を見事に体現しています。彼は巨大な事業を牽引する多忙な日々のなかで、茶の湯の空間を通じて心身の調和をはかりました。

彼が茶の席において最も大切にしたのは、流派の厳格な形式や、道具の金銭的な値段、歴史的な知識を披露することではありませんでした。彼は、本来は茶の湯のために作られたものではない日常の雑器や海外のうつわであっても、ご自身の心が「美しい」「面白い」と見込んだものは、自由な発想で堂々と茶席に取り入れました。この「見立て」と呼ばれる行為は、世間の権威や固定観念を手放し、自らの純粋な感性を信じ抜く力そのものです。

さらに彼は、これまでの古い規則に縛られない大規模な茶会を主催し、招いた客人たちがどれだけ心を許し合い、その空間の美しさを共に楽しんでくれるかという「心の動きと共鳴」に重きを置きました。歴史的背景の知識を見せびらかすための窮屈な場ではなく、ただ目の前にある造形の美しさや季節の移ろいを通じて、人と人が純粋に心を通わせ、共に歓喜を味わうための開かれた表現空間を創り上げたのです。

この物語は、私たちに「正解を手放すこと」の大切さを教えてくれます。美の体験においても、頭で考えた正解を手放し、ただ目の前のエネルギーの波に身を委ねることが最も重要です。あなたの心が微かに高鳴ったり、逆に涙が溢れそうになったりしたのなら、それはあなたの命が作品と完全に共鳴した証拠です。知識の有無は、あなたの命の価値や感動の深さとは何の関係もありません。

また、「ウェルビーイングとは、常に前向きで全く落ち込まない状態を維持することだ」という誤解も頻繁に見受けられます。生きている限り、悲しみや怒り、迷いといった複雑な感情が湧き上がるのは当然のことです。本当のウェルビーイングとは、それらの感情を無理に消し去ることではありません。波立つ感情を自分自身の1部として安全に受け止め、しなやかに立ち直る力を育むことなのです。

明治時代に活躍し、日本の伝統的な美意識を世界に伝えた思想家である岡倉天心氏は、著書『茶の本』の中で次のような言葉を残しています。

「美は、ただそれを愛する者の心にのみ存在する」

どのような状況であっても、あなたの中には自らを導き、美しいものを見出す力が必ず存在しています。美しい色彩や造形は、その光を反射し、あなたの進むべき道を優しく教えてくれる鏡なのです。ご自身の感覚を信じ、どうかご自身の心に対して、無限の寛容さを持って接してあげてください。

日常に歓喜の種を蒔く──微笑みが繋ぐ永遠の豊かさ

これまで、天宇受売命の物語を通じて、自らの生命エネルギーを循環させ、心身を満たすための道筋を辿ってきました。ここで、重要な3つの視点を集約します。

1つ目は、美しいものに惹かれる純粋な感情を否定せず、自らの内なる光を全面的に肯定すること。

2つ目は、自己の感情を安全な形で表現し、心地よい環境を自らの手で整えること。

3つ目は、正解や知識への執着を手放し、大いなる命の流れに身を委ねて喜びを分かち合うことです。

今すぐにできる小さな行動の具体案として、このような実践をおすすめします。明日の朝、洗面所の鏡の前に立った時、ご自身の目を見つめ、口角を上げてただ1度だけ、にっこりと微笑みかけてみてください。声を出さなくても構いません。ご自身の表情に宿るその無邪気な笑顔が、あなたの感覚を今この瞬間に引き戻し、命のエネルギーを優しく満たしてくれる最高の表現となります。

不朽の名作である映画『サウンド・オブ・ミュージック』の中で、主人公のマリア氏は困難な状況に直面した時、子供たちに向けてこう歌い語りかけました。「悲しい時、辛い時は、私のお気に入りのものを思い出すの。そうすれば、少しも怖くなくなるわ」。私たちを満たし、救ってくれる根源は、常に日常のささやかな愛しいものたちの中にあるのです。

最後に、日本国内で心身のエネルギーを満たすことができる、素晴らしい場所を1つご紹介します。

東京都千代田区丸の内という、皇居の豊かな緑と美しいお堀を眼下に見渡す素晴らしい場所に位置する「出光美術館」です。この場所は、昭和の激動の時代を生き抜いた実業家の出光佐三氏が、長年にわたり収集した東洋古美術のコレクションを広く人々と分かち合うため、1966年に設立されました。

この美術館の最大の見どころは、出光佐三氏が絶望的な状況に陥った際に、その心を救い笑顔を取り戻させてくれた、江戸時代の禅僧である仙厓義梵氏の書画コレクションです。常識にとらわれない自由奔放な筆遣いと、ユーモアにあふれる愛らしい作品たちは、現代を忙しく生きる私たちの凝り固まった心を、天宇受売命の舞のように大らかにほぐしてくれます。

さらに素晴らしいのは、展示室の奥に設けられたロビーからの圧倒的な眺望です。窓の向こうには皇居外苑の広大な自然が広がり、都心にいることを忘れてしまうほどの開放感に包まれます。作品が放つ生命エネルギーをたっぷりと受け取った後、ふかふかの心地よいソファに腰を下ろして雄大な景色をただじっと眺めることで、内側に湧き上がった感動を自然の波長とともに穏やかに統合させることができます。

自らの心を救ってくれた美しさを社会全体へ歓喜の輪として広げていった出光佐三氏の愛と理念が、この空間の隅々にまで満ちています歴史的な美と雄大な景色に全身を浸す体験は、あなたの生命力を見事に蘇らせてくれることでしょう。

どうか、ご自身の感覚を信じ、美しいものに触れる時間を日常の喜びとして取り入れてみてください。

最後に、あなたへ大切なメッセージをお伝えします。

愛と使命を両立するあなたへ。

私たちがこの世に生まれてきた理由は、

決して苦しんだり、人を恨んだり悲しんだり、傷つけ合ったりするためではありません。

命とは、喜びを味わうために生まれてきたものです。

命の温かさを感じ、知り、「生きててよかった」とほっとして、安心してニコニコ笑うために生まれてきたのです。

私たちは、絶対的に今世の命を楽しむべきなのです。

『愛のある場所でこそ、人は生きる力を得る。』

『人生とは、喜びという宝物を探す旅である。』

『温かな感情は体温を上げ、人を幸せへ導く。』

どうか忘れないでください。

『あなたは、神様がつくった最高傑作』です。

あなたの命が、これからも喜びというパワフルなエネルギーで満たされ、温かな笑顔とともに輝き続けることを心から願っています。

私は、「人は幸せになるためにのみ、この世に送り出された」という揺るぎない確信を持ったアーティストです。

愛や喜びは、抽象的な概念などではなく、私たちの「生命維持に不可欠な根源」だと考えています。

だからこそ、私のアートやメッセージには、あなたの存在そのものを絶対的な価値として全肯定するエネルギーを込めています。

あなたがいつも、大いなる愛と光に守られていますように。

そして、あなたの大切な命の時間が、たくさんの幸運と共にありますように。

nao

【参考情報・引用元】

  • 麻布台ヒルズギャラリー 公式ホームページ(オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期)
  • 国立西洋美術館 公式ホームページ(ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ──国立西洋美術館初の現代美術展)
  • 東京国立近代美術館 公式ホームページ(TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション)
  • オードリー・ヘプバーン オフィシャルサイト(Biography / Quotes:後世に語り継がれる名言)
  • 國學院大學 古事記学センター 公式ホームページ(古事記 神話データベース:天石屋と天宇受売命)
  • 九州国立博物館 公式ホームページ(特別展:仙厓義梵の書画とユーモア)
  • 公益財団法人 阪急文化財団 逸翁美術館 公式ホームページ(小林一三の軌跡:美術収集と茶の湯)
  • 宝塚歌劇団 公式ホームページ(宝塚歌劇の歴史:創設者・小林一三の想い)
  • 公益財団法人 石橋財団 アーティゾン美術館 公式ホームページ(美術館の歴史:創設者 石橋正二郎とコレクション)
  • 三井広報委員会 公式ホームページ(三井の歴史を歩く:鈍翁・益田孝の茶の湯と美術収集)
  • 茨城大学 五浦美術文化研究所 公式ホームページ(岡倉天心の生涯と思想:名著『茶の本』)
  • 20世紀スタジオ 公式ホームページ(映画『サウンド・オブ・ミュージック』作品情報と名セリフ)
  • 公益財団法人 出光美術館 公式ホームページ(美術館について:出光コレクションの特色と創設者・出光佐三氏の歩み)
  • 公益財団法人 出光美術館 公式ホームページ(仙厓コレクション:仙厓義梵氏の書画とユーモアの魅力)
  • 出光興産株式会社 公式ホームページ(出光の歴史:創業者 出光佐三氏の理念と日章丸の軌跡)
  • クリスチャン・ディオール 公式ホームページ(メゾンの歴史:クリスチャン・ディオールの情熱と画廊時代)
  • フロイト博物館 公式ホームページ(ジークムント・フロイトの生涯と古代美術コレクション)

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