山寺(立石寺)と、芭蕉が聞いた蝉の声 ― 一つの音に、意識が集まるとき

山形に、山寺と呼ばれる場所があります。正式には立石寺です。

松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅の途中で立ち寄り、有名な一句を残した場所として知られています。

芭蕉が聞いた、蝉の声

芭蕉が山寺を訪れたのは、元禄2年(1689年)の旧暦5月27日。今の暦でいうと7月中旬です。

そこで詠まれたのが、「閑さや岩にしみ入る蝉の声」という句です。岩山に囲まれた場所で、蝉の声だけが響き、その声が岩にしみ込んでいくように感じた、という情景です。

この蝉が何ゼミだったかは、長く議論されてきました。1926年に、油蝉だとする説が発表されましたが、その後、山寺一帯の生態を調べた結果、芭蕉が訪れた時期にはまだ油蝉は出ておらず、ニイニイゼミだったと考えられています。

山形の紫陽花
山形の梅雨どき。芭蕉が歩いたのも、この季節の少しあとでした

立石寺という寺

立石寺は、貞観2年(860年)、清和天皇の勅願により、円仁(慈覚大師)が開いた天台宗の寺です。

山の斜面に石段が続き、登っていくと視界が開けます。1000段を超える石段は、ただの移動ではなく、登る行為そのものに意味がある道です。

音を消すのではなく、一つの音に集める

芭蕉の句が伝えているのは、音のない場所ではありません。蝉が鳴いている、その真ん中にいる状態です。

たくさんの音や情報にさらされているときより、一つのものに意識が集まっているときのほうが、頭は片づきます。芭蕉が岩と蝉の声で感じたのは、そういうことだったのではないでしょうか。

絵の前に立つ時間にも、似た働きがあります。視界が一枚に集まると、頭の中で並行して動いていたものが、いったん止まります。

Mermaid nao のパーソナルオーダーアートは、対話でうかがったことを、色・形・光にして一枚にします。額装を含めてお届けしています。


[Reference Information, Sources]

Wikipedia(閑さや岩にしみ入る蝉の声/立石寺)
四季の美(奥の細道「立石寺」原文と現代語訳・解説)
三重の文化(奥の細道―立石寺)

https://ja.wikipedia.org/wiki/閑さや岩にしみ入る蝉の声
https://shikinobi.com/okunohosomichi-4
https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/haiku/42270035030.htm


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