制作と想い ホーリー祭 ― 色を浴びる、インドの春 インドに「ホーリー祭」という春のお祭りがあります。人々が色のついた粉を、たがいに塗り合い、かけ合うお祭りです。色をあつかう仕事をしていると、この光景がずっと気になっています。善が悪に勝つことを祝うホーリーは、春の訪れを告げるヒンドゥー教の大切なお祭りです。由来のひとつは、悪魔の王と、信心深いその息子プラフラーダの神話で...
制作と想い パウル・クレーさんと色 ― 「色彩と私はひとつだ」と書いた旅 画家のパウル・クレーさんは、色について考えるとき、わたしがいちばん思い出す人です。ある旅をきっかけに、色に対する感覚が大きく変わった人だからです。チュニジアへの旅1914年4月、クレーさんは画家仲間とともに北アフリカのチュニジアを旅しました。強い日ざしと、光にあふれた街の色。その体験の前と後で、クレーさんの色づかいは明...
制作と想い 紅花のこと ― 山形が日本一だった「紅」の色 山形県の県花は、紅花(べにばな)です。これは飾りではなく、歴史に根ざした選ばれ方をしています。山形は、日本一の紅花の産地だった江戸時代、最上川の中流にあたる村山地域は、肥えた土と朝霧の立ちやすい気候にめぐまれ、日本一の紅花産地に育ちました。その量は「最上千駄(もがみせんだ)」と呼ばれ、江戸時代後期の最盛期には、全国の紅...
制作と想い レオ・レオニさんとスイミー ― 一匹の黒い魚の話 『スイミー』を描いたレオ・レオニさんは、色と「一匹であること」について考えさせてくれる作家です。一匹だけ、黒い魚小さな赤い魚のきょうだいたちの中で、スイミーだけが真っ黒でした。ある日、大きな魚にきょうだいをのみこまれ、スイミーはひとりになります。海をさまようスイミーは、やがて別の赤い魚の群れに出会います。そして、みんな...
制作と想い エリック・カールさんの色 ― 薄紙を切り貼りしてつくる絵 『はらぺこあおむし』を描いたエリック・カールさんは、わたしが色の作り方を考えるとき、よく思い出す作家です。まず、色紙を自分でつくるカールの絵は、いきなり紙に描いていくのではありません。先に「色のついた薄紙」を大量につくり、それを切り貼りしてかたちを組み立てます。ニスを下塗りした薄い紙に、指や筆でアクリルや水彩、ポスター...
制作と想い 岩絵の具のこと ― 石を砕いてつくる、日本画の色 わたしは絵を描くとき、いくつかの画材を層のように重ねていきます。そのひとつが、日本画で使う「岩絵の具(いわえのぐ)」です。祖母は日本画を描く人で、その絵はいまも、わたしの家の和室にかけてあります。岩絵の具は、わたしにとって少し特別な画材です。石を砕いた粉が、そのまま色になる天然の岩絵の具は、鉱物を砕いた粉です。着色料を...